また、前回のレビューから間が空いてしまいましたが、いよいよセブンXも最終話。
最終話は前回からの続き。他のエージェントに踏込まれ、追いつめられた緊迫感の中、ジンとエレア、 ケイとエスの二手に分れて施設の破壊に向う。ジンの側は、エイリアンから猛攻を受ける一方、 ケイの側は光学迷彩で隠された施設に潜入、潜行する。
エレアから「自身の力の事を思い出すと自分で無くなる」と警告を受けるジンだが、 猛攻の前に追いつめられてセブンXに変身。闘うものの、クモのような姿の敵エイリアン3体は存外に強く、 光る糸のようなものに縛り上げられ、敗れてしまう。
意識の世界で、ジンはこの世界の支配者と思われるものたちと会う。人間の姿をしているが、 敵エイリアンの意識の中だけの姿なのか、それともこの意識の中の姿が本体なのだろうか。
支配者は、情報の提供側にあり、侵略するでもなく、ただ存在する、という。支配されている、 という意識を持たせることなく、世界を支配している、というのは非常に不気味であり、巧妙である。 現実社会でも同じような可能性が十分に考えられる、という点が不気味さをより強調している。
支配者は、ウルトラセブンの役目が終った、として、留めを刺そうとする。セブンのことは十分にわかっていて、 利用していたようである。自分達にとって邪魔なエイリアンを排除するため、セブンを利用していたようである。
一方、施設に潜入したケイとエス。敵も甘くはない。行動はすでに把握されており、激しい攻撃の中、 中枢と思われる場所にたどり着くが、エスが負傷する。そして、中枢部からは激しい銃撃、窮地に陥る。一発逆転、 と自身を犠牲にして爆破の覚悟を決めるケイ・・・・これまでの二枚目半から三枚目とはうって変わって、 シリアスで頼れる男になっているのが格好良い。
・・・・負傷して変身が解けたジンの傍らでエレアが遂に謎を語る。三ヶ月前、銃撃を受けて湖に沈みゆくジンは、 別の世界=これまでのウルトラ世界から来たセブンの赤玉によって命を救われていた。ただし、 ジンとセブンが一体となるにあたって代償があり、ジンの意識が残っている間は、本来の力を発揮できず、 また本来の力に目覚めると、ジンの意識は無くなる。
セブンは自分達の世界を救いたい、というエレアの思いに引寄せられるかのようにやって来たらしい。 セブンと一体化する前の記憶は封じられてしまったようだが、これでEpisode 1の、水中で浮ぶジンの記憶の意味、 そしてエレアがずっと陰に陽にジンをみまもっていた理由がわかりました。
「セブンX」は、本来のセブンではない、ジンとセブンが融合した、やや特殊な状態のウルトラセブンであった、 ということでしょうか。
この後、覚醒したジンは、もはやジンではなく、本来のセブンの力に目覚めた「救世主」。 先ほどとは段違いの圧倒的な強さとスピードで、3体のエイリアンを倒し、さらに地下に巣くう大量のエイリアンをもなぎ倒し、 さらに窮地のケイとエスを救い出しました。
ケイとエスを救うまでの描写はスピード感に溢れており、見ていてゾクゾクしました。死を覚悟したケイとエスが、 最期のチョコレートを食べるシーン、極限状況の男女の姿は何とも言えず格好良かった。自分の人生の終りがケイと一緒なのが 「一生の不覚」というエスだが、表情は必ずしもそうでもない。 ストレートなセリフを言わないところがエスらしくて良いですね。
全てが終り、セブンはジンと分離し、赤玉となって自分の世界へと帰って行く。結局のところ、世界を救った原動力は 「エレアの望み」だったのかもしれません。死地を乗越えたケイとエスの関係は、この後どうなったのでしょうか。 気になるところではありますが、残念ながら作品内では描かれていません。
ジンの世界では、この後も、一般市民は何も知らずに生きていく、というが、 エイリアンの支配が人間の支配に変っただけかもしれません。これが「New World」なのでしょうが、 それで何かの解決になっているのか?もしこれを現実世界に投影させるとしたら・・・?考えさせられるラストではあります。
さて、本話のところどころで、フラッシュバックのように出てきた、湖にたたずむ女性の後ろ姿。ラストシーンは、 その女性に歩み寄るモロボシ・ダン。アンヌが、ダンの帰りを待っていた・・・・End
今回の作品は、ウルトラセブンがセブンXとして、病めるパラレルワールドを救い、 別の世界からの侵略の危機をも救った、というエピソード。作品世界では、 ダンとアンヌがともに仲良く暮している感じであったが、そうであれば、セブンがダンとして帰還した世界も、 本来のウルトラセブン世界とは異なる平行世界だったのかも知れません。
振返ってみると、最終話の謎解きで1話とつながって、緩やかに全体がまとまっている、という印象ですが、 作品全体の連続性を見るより、個々のエピソードが主張する問題意識やファンタジー性を楽しむ、 という見方が楽しいのではないか、と思いました。
また、二度、三度と見れば、おのおののエピソードも、また違った視点から楽しめるのではないかと感じました。 こういった点は、「ウルトラセブン」のテイストを引継ぎながらも、従来までとは少し異なった、 大人向きの味付けと言えるでしょうね。
個人的に印象深かったのは、「HOPELESS」「TRVELLER」「RED MOON」。前二つは投げかける問題が印象深く、 最後は単純に耽美的世界に惹かれます。
ウルトラセブンXは、「ウルトラセブン奇譚」と呼ぶのがふさわしい作品と思いますね。