名作「フランダースの犬」で泣けるのはどうも日本人だけらしい。物語の舞台・ベルギーの映画監督ディディエ・ ボルカールト氏が、フランダースの犬を検証するドキュメンタリー映画を作成したそうです。
ヨーロッパでは、ネロが天に召される終り方は「負犬の死」でしかないそうです (^^; 成功や幸せとは対極にある、ということで「負犬」なんでしょうかねぇ。ボルカールト氏は、日本人には「滅びの美学」があり、 フランダースの犬はその美学にマッチしている、という見方のようです。判官びいき、 といった心情にも通じるものでしょうかね。
「フランダースの犬」は、探偵ナイトスクープなどで、必ず泣ける作品として多用されるほどの名作ですが、 このラストシーンが日本人の心の琴線にのみ触れる、というのは意外に思えました。
私は琴線に触れる方のクチですが、日本人といえども「負け犬」と思う人はいるでしょうね。最近の風潮からすると、 負け犬と思う人の割合は結構高いのかも知れませんね。
YOMIURI ONLINE
「フランダースの犬」日本人だけ共感…ベルギーで検証映画
【ブリュッセル=尾関航也】ベルギー北部フランドル(英名フランダース) 地方在住のベルギー人映画監督が、クリスマスにちなんだ悲運の物語として日本で知られる「フランダースの犬」を“検証” するドキュメンタリー映画を作成した。
物語の主人公ネロと忠犬パトラッシュが、クリスマスイブの夜に力尽きたアントワープの大聖堂で、 27日に上映される。映画のタイトルは「パトラッシュ」で、監督はディディエ・ボルカールトさん(36)。 制作のきっかけは、大聖堂でルーベンスの絵を見上げ、涙を流す日本人の姿を見たことだったという。
物語では、画家を夢見る少年ネロが、放火のぬれぎぬを着せられて、村を追われ、 吹雪の中をさまよった揚げ句、一度見たかったこの絵を目にする。そして誰を恨むこともなく、忠犬とともに天に召される。 原作は英国人作家ウィーダが1870年代に書いたが、欧州では、物語は「負け犬の死」(ボルカールトさん) としか映らず、評価されることはなかった。米国では過去に5回映画化されているが、 いずれもハッピーエンドに書き換えられた。悲しい結末の原作が、なぜ日本でのみ共感を集めたのかは、 長く謎とされてきた。ボルカールトさんらは、3年をかけて謎の解明を試みた。資料発掘や、 世界6か国での計100人を超えるインタビューで、浮かび上がったのは、日本人の心に潜む「滅びの美学」だった。
プロデューサーのアン・バンディーンデレンさん(36)は「日本人は、 信義や友情のために敗北や挫折を受け入れることに、ある種の崇高さを見いだす。ネロの死に方は、 まさに日本人の価値観を体現するもの」と結論づけた。
上映時間は1時間25分。使用言語は主にオランダ語で、 日英の字幕付きDVDが今月からインターネットなどで販売されている。
(2007年12月25日11時39分 読売新聞)
「滅びの美学」という見方に、なるほどという思いがします。
往時の日本人は、何でも勝つこと、お金もうけのことばかりを目指していたわけではないような気がします。
自身の不幸について、誰を恨むでもないネロの心の有り様が、グッときます。
物質的な幸福を追求する立場から見れば「負け犬」なのでしょう。が、欧州(と言うよりも西洋文化でしょうか)で「評価される事は無かった」と言うのも偏った感じがして、本当かな?と言う気がします。