100年ぶりの皆既月食を控え、白いドレスを着た女性が怪物に襲われる事件が発生。調査、 解明に乗りだしたデウスのエージェントが見たものは・・・・・
その事件は、100年前、相思相愛だった「まひる」
令嬢を自分の手で殺めてしまった望青年=エイリアンが起していたもの。望青年は水に触れると獣化する性質があったようで、
水に近寄ることはなかった。
が、ある日まひるが愛の証として池に咲く蓮の花をとってきて欲しい、という願いを聞くため、池に入るが、
自身の体質には打勝てず、獣化してしまう。理性も失われてしまうのか、まひるを殺害してしまう。その時、
まひるは白いドレス姿だった。
その街には地下壕が縦横無尽に走り、エイリアン望はそこに隠れていたようである。そして100年たった今、 まひるとの約束を忘れず、白いドレスを着ている女性をまひるかと思い、探し続けていたのである。
今回は、エージェントたちはみな切れ者で、各自が少しずつ謎を解き、それをパズルのように組合わせて、 100年前の事件に迫ってゆきます。なかなか良い構成です。謎のカギを握るのは、謎の男がジンに見せるようにし向けた、 双眼鏡の形をした「グラスメモリア」という映像記録器。
100年前の時代設定が、明治・大正の頃の深窓の令嬢と書生の恋、といったところで、伝奇的な色合いが強く、 怪しげな雰囲気が良く出ています。グラスメモリアもレトロな味を出していました。
人間の姿をしていた時の理性を失ってしまっても、愛を忘れられず、この世にはいないまひるを追い求め、 苦悩するエイリアンは、とても切ない存在。長命で長く苦しんでいる点が、なおさらに切なさを増幅させています。
ケイとエスをノックダウンさせるほと強力なエイリアン。セブンXが、 その事情にためらいながらもアイスラッガーで倒します。死でしか救われない?
この結末へと導いたのは、グラスメモリアをジンに渡した男。エイリアン望の兄である朔。 変り果てた姿になった弟でも、自分で殺めることは出来ず、100年間付添い、 セブンXに命を終らせてもらうことを選択しました。
二人は、どこかの星から地球にやってきた旅人で、長い間二人で生きてきたのでしょう。 弟の死を選ばざるを得なかった兄も、また切ない存在。
自身が愛するものを殺めてしまう、また記憶にまつわるストーリーであるという点は、前話の「BLOOD MESSAGE」に共通していると思いますが、前話が苦悩を外に発散しているのに対し、本話では内に溜込んでいる、 という違いがあったように思います。
レトロで耽美な空気と共に、エイリアンの苦悩・切なさが胸に残る一編でした。