ここのところ、ULTRASEVEN Xは録画していたものの、見れていなかったのでレビューは遅れ気味です。
多数の人間が深夜にUFOによって連れ去られる(アブダクション)事件が発生。ジンとKが捜索にあたります。 この件には1年前に失踪したデウスのエージェント「R」が関与しています。連れ去られた人達は、この世界の中で、 本当の自分が何なのかわからず、本来の自分を取戻すため、と言う動機で、UFOに連れられていきます。
作品中「UTOPIA」という言葉が頻繁に出てきます。「R」曰く、 この世界が提示する模範的な幸福を従順に追求するあまり、 自分は本当は何なのかわからなくなった人達が自ら求めて船(UFO)に乗るのだと言います。 R自身も同様に悩みを抱えています。
外部からもたらされた価値観に従ってばかりで、自分のものと言える価値観が確立できない状態でしょうか。 ジンたちが住む世界がユートピアなのか、それともUFOで向う世界のことなのか。
Rが人々を誘う手口が解き明され、ジンとKがRに迫っていくプロセスは面白かったですね。 TVのサンドストームにサブリミナルメッセージを込め、潜在意識に働きかける手口。
最後に明かされたRの目的は、ジンをこの世界から連れ去ること。 そのためにウルトラアイを奪ってジンをUFOのもとへおびき出しますが、ジンの問いかけに応じて、 ウルトラアイを返してしまいます。
RはUFOに連れて行ってもらえると思いきや、任務に失敗したRは、UFOからのビームで一瞬にして消されます。 結局、エイリアンにとってはコマの一つでしかなかったようです。せつない。やりきれない気持のジンはセブンに変身、 猛スピードで逃げ去るUFOをビーム一発で撃破。
信じるものに裏切られたエージェントRの存在はせつなく、UFOやエイリアンのことは、結局謎のまま。 「本当の自分が何なのかわからない」は、現代の社会人にそのまま投影される問題でもありますね。 よく考えると奥深いものがあります。
何とも言えない余韻が残る作品でした。