地震を受けた柏崎刈羽原発ですが、微量の放射能を含む水が施設外に漏れていたとのこと。 微量なので人体や環境への影響は今のところ無いそうです。漏れた水は、 90cmの厚さの壁で隔てられた管理区域から出てきており、なぜ漏れ出たかはわからないとのこと。
現実に今存在している原発が地震を受けたのだから、これまで主張してきた「安全神話」にこだわらず、 水漏の原因を究明し、今後は防止する対策を取って欲しいですね。人間は万能では無いのだから、 至らなかった点は素直に認めて、謙虚に安全対策を施す方が現実的でしょう。
これから、運転再開へ向けて施設の詳細な点検を進めるのでしょうが、そのような謙虚な姿勢で臨んで、 良かったことも悪かったことも隠蔽せずに公開して欲しいです。悪かったことを隠蔽しているようでは、この先、 原発への信頼性は低下するばかりでしょうね。
asahi.comでは、早速耐震設計が甘かっただの、原発安全神話を批判して責任追及をしたいようです。しかし、 そんな話は復旧へのメドが立ってからすればいいことではないでしょうか。
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放射能含む水漏れる、柏崎刈羽原発 中越沖地震
2007年07月17日01時31分
新潟県中越沖地震の影響で、東京電力柏崎刈羽原発6号機(新潟県)で使用済み燃料プールの水があふれ、 施設内の排水溝を通じて海に流れ出ていたことが16日、東電の調べでわかった。水は微量の放射性物質を含んでおり、 経済産業省原子力安全・保安院は「地震で放射性物質が原発の外部に漏れたのは過去に例がない」と事態を重視している。
保安院によると、地震後の午後0時50分ごろ、原子炉建屋3階などの放射線非管理区域で、 放射性物質を含んだ水たまりが見つかった。
この水は原子炉の熱を取り出している冷却水よりも、放射能量が低かった。また、 原子炉建屋内にある使用済み核燃料を保管しているプールの水が地震の揺れで波打ち、外にあふれ出ていたことも確認した。
こうした状況から、東電などは、この水が放水口から海に出たと推定、量は少なくとも1. 2立方メートルになるとみている。
ただ、16日夜の時点で放出は止まり、海水中の放射能の測定値にも異常がないことを確認したという。 人体や環境への影響は認められていない。
3月の能登半島地震でも北陸電力志賀原発1号機でプールから水が建屋の床に飛散したが、 原発の外には出なかった。
今回の地震では、これまで国内の原発で観測した中で最大の揺れを記録した。経済産業省原子力安全・ 保安院によると、1号機の地下5階に設置された地震計で東西方向に680ガルの揺れを観測。 原子炉など重要機器の設計で想定する273ガルを大きく上回った。
地震で、原子炉を動かしていた2、3、4、7号機が自動停止したが、 3号機建屋わきの変圧器で火災が起こり、黒煙が上がったが鎮火した。6号機のほか、1、5号機も点検中だった。
2007年07月17日08時03分
新潟県中越沖地震で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)では、耐震設計の甘さが浮上した。 設計上の想定を大幅に上回る、国内の原発で過去最大の揺れが観測され、放射能を含む水漏れも起こった。 地震が起こった場所は「新潟―神戸ひずみ集中帯」とも呼ばれ、阪神大震災をはじめとする地震が、 相次いで起こっている場所だ。
放射能を含む水が漏れたとの東電の発表は午後10時すぎ。寺津邦信・原子力運営管理部長らによると、 漏れた水に含まれる放射性物質の分析から、使用済み燃料棒を保管するプールから水が漏れたとみられるという。
地震時、放射線管理区域内にあるプールから水があふれ、床が水浸しになるのは想定内のことだというが、 管理区域外に漏れたことについて「約90センチの厚さの壁で遮断されているのに、なぜ漏れたのか。理由は不明だし、 想定していなかった」と繰り返した。一方で、「漏れた(放射性物質の)量は、 ラドン温泉に例えると約6リットルにすぎない」と話した。
3月の能登半島地震でも北陸電力志賀原発1号機で、 使用済み核燃料貯蔵プールから放射性物質を含む水45リットルが原子炉建屋内の床に飛散した。
今回の地震では現在、原子炉などの重要機器に異状は確認されていないが、 耐震設計が甘かった可能性がある。
経済産業省原子力安全・保安院によると、国内原発で観測された過去最大の揺れの680ガル (ガルは加速度の単位)を記録した1号機のほかデータが取れた5、6号機でも想定を超えた。
保安院は東電に詳細な調査を指示。東電は調査結果が出るまで1〜7号機のすべての運転を停止する。 保安院原子力発電安全審査課の森山善範課長は「設計基準の加速度を大幅に超える揺れだ」と話した。
今回の震源は同原発から北へ約19キロ離れた海底活断層とみられるが、東電は、 これを設計時には見つけられなかった。東電は6、7号機の設置許可を申請した88年より前に海底を音波で調べ、 19キロから39キロ離れた海底で4本の断層を見つけていたが、耐震設計上、 活断層として考慮しなくてよいと結論づけていた。
原子炉などの重要機器について、耐震設計では原発の敷地から10キロ以内に震源を持つマグニチュード (M)6.5の地震と、敷地から北東に12キロ離れた断層などでの地震を想定していた。
今年3月の能登半島地震でも、北陸電力が震源付近の活断層を過小評価していた。 日本原子力発電敦賀原発(福井県)も、同社と政府の地震調査委の海底活断層の調査結果が食い違っている。
一方、地震直後、同原発の敷地内で黒煙が上がった。 3号機の原子炉建屋から30メートルほど離れた変圧器から出火した。
YOMIURI ONLINE
経産相、柏崎刈羽原発の被災報告遅れで東電に厳重注意
甘利経産相は、17日の閣議後会見で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所で、 想定を超える最大680ガルの揺れを記録したことに関連し、「原発の耐震安全性の確認をできるだけ急がせたい」と述べ、 新耐震基準に照らした国内の全原発55基の再検証作業を速やかに終えたいとの考えを明らかにした。
これに先立ち、安倍首相は16日夜、中越沖地震で、 東京電力柏崎刈羽原発の被災に関する同電力の対応に問題があったとして、甘利経済産業相に対応を指示した。
政府筋によると、首相は変圧器火災の鎮火や放射能漏れの確認が遅れたうえ、 東京電力からの報告が同日夜の関係閣僚会議に間に合わなかったことを問題視したという。
経産相は17日午前0時過ぎ、東京電力の勝俣恒久社長を同省に呼び、 報告が遅れたことについて厳重注意した上で、<1>消火活動のあり方を検討し、 早急に報告<2>放射能漏れと報告の遅れについて原因究明し、 再発防止策と合わせて報告<3>耐震安全性の再確認が終わるまで運転停止――を求めた。
東電によると、今回の地震で、放射能を含む水漏れの国などへの報告が遅れたのは、 国内の原発で初めてとなる地震と火災の同時被災に、人の確保などが間に合わず、対応が後手に回ったためであるという。
変圧器火災の発見は、地震直後の16日午前10時15分。しかし、 地元消防本部が到着し作業を開始したのは、1時間以上たった同11時33分だった。
発電所には、自主防災組織があるが、初期消火にあたったのは、発見者の職員や作業員ら4人のみ。 消防隊到着まで、延焼を防ぐため周辺に放水するにとどまった。同社では「他施設でも被害が出て、 指示などが混乱状況にあった」と話し、自主防災体制が十分に機能しなかったことを認めた。
一方、6号機の使用済み燃料プールに隣接した「非管理区域」で水漏れが見つかったのは、 同日午後0時50分。プールと厚さ数十センチの壁で区切られているため、漏えいは原理的に考えにくい。 そのため確認が後回しになり、漏えい水が放射能を含んでいることを把握し、経済産業省へ報告したのは発見から6時間後。 漏えい水の海への流出の報告は、さらに遅れ、同8時28分になっていた。
東電側は「海への流出に気付いたのは、 非管理区域にある放出用ポンプの稼働を確認した午後8時10分ごろ」と説明する。
(2007年7月17日11時40分 読売新聞)