京都は知恩院の有名なウグイス張りの廊下が、修復を行うため、一部鳴かなくなる見通しだそうです。
もともと、江戸初期に再建した後、約370年の時間が過ぎ去り、廊下の床板と支える横木に隙間が出来て、
それをつなぐ留め金具と釘がこすれて、廊下が鳴くそうですが、修復してしっかりと作り直すことで、
鳴き声は出なくなるとのこと。またウグイス張りが復活するのは、50年、100年先になるだろう、ということです。
ウグイス張りの廊下を、今の観光資源としてみれば、これはかなりの損失になるでしょうが、 やはり知恩院を後世に引継いでいくためには、修復をしておく必要があると言うことです。
長い目で見る必要がある、ということですね。私の仕事である土木設計でも、できあがった構造物は長く使われるので、 同じように遠い将来まで見据える必要がありますが、やはり目先の経済性や効率性が優先されがちです。 耐久性は当然考慮していて、例えば100年の耐用期間を目指しますが、実際には30〜40年で老朽化してしまったり・・・・
寺院建築は、再建や修復をしながら、数百年、千年単位で受継がれてきています。はるか昔に比べれば、今の建築・ 土木技術の方が、いろいろな事象を解明し、進んだものであるはずなのに、 長持するものをなかなか作れていないのはなぜなのでしょうか。
例えば宮大工の方々がこれまで受継がれてきた経験・技術や、文化財保存に関係するノウハウなど、 工学的な数式で予測出来ないようなものに、ヒントがあるのかも、と思います。
浄土宗 総本山知恩院
http://www.chion-in.or.jp/
YOMIURI ONLINE
知恩院・鶯張りの廊下、修復で「鳴き声」消える見通し
知恩院(浄土宗総本山、京都市東山区)の七不思議の一つで、 歩くとウグイスの鳴き声のような音が聞こえる「鶯(うぐいす)張りの廊下」が、宗祖法然の遺徳をしのんで行われる 「平成の大修復」後、御影(みえい)堂(国宝)と集会(しゅうえ)堂(重要文化財)から“消える”見通しになった。
長年の歳月で緩んだくぎが床板の留め金具にこすれて音がするが、修復でくぎを固定するため。寺は 「50年、100年が過ぎれば再び鳴き声が聞こえるようになるはず。それまでご辛抱を」としている。
鶯張りの廊下は、境内の御影堂から集会堂、大方丈、小方丈に続く全長約550メートル。 静かに歩くほうが音が鳴るため、不審者の侵入を感知する警報の役目もあるとされる。
廊下は、床下に渡す横木を、床板の裏から留め金具とくぎで固定している。 江戸初期の再建以来約370年で木材が乾燥、収縮し、床板と横木の間にすき間が生まれ、 緩んだくぎが金具にこすれて独特の音を出すようになったらしい。
大修復は2011年の宗祖法然の遺徳をしのぶ「800年大遠忌(おんき)」記念事業の一環で、 再建後初めて、御影堂と集会堂の廊下計約310メートルのヒノキ板を全面的に張り替える。集会堂は05年7月に着工し、 11年3月の完成を目指している。御影堂は大遠忌法要後に着工、19年に完成の予定。
修復担当の府教委文化財保護課の奥野裕樹専門員は「くぎを緩めれば音は出るが、 床板が動いて傷みやすくなる」と話す。
知恩院文化財保存局の話「鶯張りを後世に残すための養生。大方丈などの廊下は今まで通りです」
(2007年6月16日14時44分 読売新聞)
修復で鳴かなくなってしまうとは
当時は防犯の為に鳴かせていた技術
まんま修復出来ない?って事なんですかね?
うぐいす張りの床下にもぐって、なぜ鳴くかを見て聞いた事があります
先人の考えと技術に感動したものでした
・・・昔話ほど前の話ですが(笑)
かの双子の塔で有名な薬師寺でも、片方の塔を再建する際に、わざと高くして作りました。そして、数百年後に同じ高さになるということです。木造建築物は生きていますから、今の我々の視点だけから考えてはならないのでしょう。
釘をゆるめると音は出るそうですが、それでは傷みやすくなるので、釘をきっちりと固定して長持させる、という選択をしたんですね。
保存のためには、そういう選択も必要なのでしょう。
>tenjin95さん
「木」という素材の使い方は、やはり大工の方々が精通されていますね。実際に経験則が蓄積されていますから。
数百年後に同じ高さになるから・・という判断を下すのは、勇気が要ると共に、技術者としてはとてもやりがいのある判断だと思います。