福島県会津若松市で高三男子が母親を殺害した事件のその後。少年の供述などから、
断片的ですが犯行の動機や背景に関係する事がわかってきています。母親の首を持歩いてから自首したのみならず、
右腕を植木鉢に差したり、左腕を切取って吊下げようとした(死体を飾ろうとした)、
などさらに猟奇的な面もあわせて明らかになっています。
前もって凶器を準備するなど、犯行は計画的だったようです。
全容が解明されたわけではありませんが、少年は高校では孤独で、やがて不登校となり、 その間に殺人や死体損壊への興味と欲望を深めていったように思えます。少年が「グロテスクなものに興奮する」 とのことのなので、犯行に関しては本人の嗜好が関係しているようです。精神鑑定が行われるので、 そちらではっきりとしてくるでしょう。
なぜ、殺害の対象が同居している弟でなく、母親であったのかは、まだはっきりとはしていません。が、 少年にとっては、何らかの理由があってのことではないでしょうか。
情報をつなぎ合せてみていると、10年経って今では社会復帰しているという酒鬼薔薇聖斗と、 ますますオーバーラップして見えてきます。そして、学校で孤独であった点は、バージニア大で銃の乱射事件を起したチョ・ スンヒともイメージが重なります。
動機と背景の解明にはまだしばらく時間がかかるでしょうが、この少年もまた、酒鬼薔薇と同じように、 長い時間かけて矯正(更正)プログラムを受けて、社会復帰することになるのでしょうか。
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福島 母親殺害・首を切断(追記あり)
YOMIURI ONLINE
「グロテスクなものに興奮」福島・母親殺害の少年が供述
福島県会津若松市で県立高校3年の男子生徒(17)が母親(47)を殺害した事件で、 会津若松署の調べに対し、生徒は「殺害場面などグロテスクなものを見ると興奮するので、自分でも人を殺したくなった」 「(母親を殺害したのは)女で弱いと思ったから」と供述していることが24日、わかった。
また、不登校状態となっていた間に「グロテスクな画像や本にのめり込んでいた」とも供述しており、 同署でさらに動機を追及している。
調べによると、生徒は、欠席が目立つようになった昨年9月ごろから、 携帯電話で関連サイトからダウンロードした残虐な画像を見たり、殺害をテーマにした本に熱中したりし始めた。 4月13日の登校を最後に不登校状態になって以降、さらに残虐な世界につかっていったという。
同市内の生徒の自宅アパートからは、昭和に発生した殺人事件をまとめた本や、 死体損壊をテーマにした英国の作家の小説、残虐シーンが描写されている漫画11巻が押収されている。
(2007年5月24日14時32分 読売新聞)
毎日インタラクティブ
母親殺害:47回目の誕生日に…高3男子、学校休みがち
「母を殺しました」。15日朝、福島県立高校3年の少年(17)が、 こう言って県警会津若松署に自首した。持っていたバッグから、切断された頭部を取り出す。調べには「誰でもよかった」 と静かに話しているという。母親とは別居し、学校を休みがちだったという少年。母親との間で、17歳に何があったのか。 出頭したこの日は、母の47回目の誕生日だった。
■少年と家族
少年が通う県立高校の校長は、少年について「担任からは、休みがちで、 精神的に不安定だったと聞いている」と説明。一方、少年が卒業した中学の校長は「休むことなく通い、成績も優秀だった。 普通通りの学校生活を送り、目立った行動はなかったと思う」と話す。中学の時には、県中学スキー大会の飛躍、 複合でともに4位だったほか、駅伝にも参加する活発さもあった。高校時代に何らかの変化があったことをうかがわせる。
少年の実家は、少年が住むアパートがある会津若松市から、車で約1時間ほど離れた同県金山町にあり、 祖父母と両親、中学1年の三男が暮らす。少年は長男で、同市内の県立高に通うためアパートを借り、 別の県立高校2年の次男と住んでいた。父親は団体職員。母親は保育士で、元同僚は「欠勤もなく明るい人柄で、 頼られていた」といい、現在は自治体の臨時職員を務めている。
母親は、洗濯のため時々少年のアパートを訪ねていた。近所の主婦は「子供が2人で暮らしていて、 たまにお母さんが訪ねてきて世話をしていたようだ。昨日の夕方に訪ねてきたようだ」と話している。
少年のアパート近くに住む主婦(66)は、母親について「4月に町内会の会費の集金に家を訪れた際、 子供2人だから半額だけもらっていいですかというと『お支払いします』と丁寧に答え、腰が低かった」と話した。
また「ゴールデンウイーク中も2〜3日泊まっていったようだ。 昨日も夕方から今朝まで車が止まっていたので、ああ来てるんだなと思った」と語った。
■現場周辺
会津若松市内にある少年が住むアパートは、閑静な住宅地にある。3軒棟割りの2階建て住宅。 この一室で見つかった首のない遺体は、布団に横たわっていたという。
近くの60代の無職男性は「家の前を通ると、いつも自転車が3、4台とまっていた。 高校生ぐらいの子供が住んでいて、友だちが遊びに来ているのかと思っていた。子供だけの家とは思っていなかった」 と話した。
20歳代の主婦は「上の子(少年)はあまり外に出ないので、見かけなかった。 お母さんの車は今もアパート駐車場に止めてあり、週末に来て何かもめ事があったのでしょうか」。近くに住む主婦(60) は「こんな静かな住宅街で、母親殺しなんて」と驚いていた。
また、母親の自宅近くにも、事件の波紋が広がった。近くに住む男性は「昨日の朝に会ったが 『おはようございます』といつもと全然変わらなかった。事件を聞いてびっくりした」と驚いた様子。 子供が被害者の三男の同級生という同町農協職員の女性は「(以前にあった)土砂崩れ被害のときは『お金がかかる』 とこぼし、子供については『男の子が3人なので手がかかるのよ』と笑っていた」と話した。
■県立高校
生徒の通う県立高校は02年、名門校だった女子高が共学化された学校。進学校として知られ、 国公立大にも多数合格している。遠くて通学できないため、会津若松市内に下宿する生徒が半数を占める。この日は 「生徒が母親を殺した」との一報を受け、午前9時45分に生徒959人全員を帰宅させた。また、県警に職員を派遣し、 容疑事実の把握に追われた。
校長によると、一斉下校は「生徒に動揺を与える重大な事件で、授業を受けられる心境ではないだろう」 と判断したためで、生徒たちには担任らを通じ「命にかかわる重大な事件が発生した。 今後は報道で具体的な事件の内容を知るだろうが、冷静に対応するように」と伝えたという。
また、福島県教委は朝から、野地陽一教育長ら幹部職員や県立高校を担当する県立学校グループ幹部が、 対応を協議。少年の実家のある県内の自治体の教育委員会も、朝から幹部が協議に追われていた。
◇被害者と強い葛藤が
▽上智大の福島章名誉教授(犯罪心理学) の話 親の首を切って警察に持っていくという行為は過去にも聞いたことがない猟奇的事件だ。首を切るという行為は、 被害者との葛藤(かっとう)が非常に強く、 強者で首を切らないと報復されるという恐怖感が強い場合に過去に起きているが、 今回も少年に何らかのストレスが働いていたことがうかがえる。生い立ちや病歴、 医療などの要因が複雑にからみあっていたとみられ、動機や供述などをよく調査することや専門家の精神鑑定が望まれる。
◇厳罰化する少年法
14歳の少年による神戸連続児童殺傷事件(97年)を機に厳罰化の必要性が叫ばれるようになった。 少年法が00年に改正され、刑罰適用年齢が「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げられ、 殺人などの重大な非行事実に問われた16歳以上の少年は原則検察官送致(逆送)になった。
また、 長崎県佐世保市で04年に起きた小学6年女児による同級生殺害事件などをきっかけとして改正議論が再燃。 少年院送致の下限年齢を現行の「14歳以上」から「おおむね12歳以上」 に引き下げる内容を盛り込んだ改正案が今国会で議論されている。
英文を読む英文を読む毎日新聞 2007年5月15日 11時34分 (最終更新時間 5月15日 13時59分)
asahi.com
高3、母殺害の動機は依然不明 会津若松
2007年05月20日21時56分
福島県会津若松市に住む県立高校3年生の少年(17)が母親(47) を殺害したとされる事件は発生から約1週間たつが、殺害の動機は依然としてはっきりしない。殺人・ 死体損壊容疑で送検された少年は、事件後にカラオケ店やインターネットカフェに立ち寄り、殺害の対象を 「誰でもよかった」と供述するなど、不可解な部分が多い。県警と地検は、勾留(こうりゅう) 中の少年に対する精神鑑定も視野に、事件の全容解明を目指す。
少年が高校1年生の時に教室で撮ったクラス写真がある。級友たちがじゃれ合う中、少年は写真の左端に、 ぽつんと立っている。親元を離れ、県内有数の伝統校に進学した少年について、よく知る関係者は「周りに溶け込まずに、 1人でいることを好んでいるようだった」と振り返る。
昨秋以降、欠席が目立つようになった少年は4月、5日間出席しただけで学校に姿を見せなくなった。 5月に入り、少年と市内の精神科を訪れた母親は、学校側に「精神的に不安定になっている」と伝えていた。
■計画的犯行?
少年の供述から、殺害を思い立った時期は明らかではない。だが、 計画的犯行をうかがわせる証拠が現場で見つかった。
少年の自宅アパートの部屋には凶器とみられる包丁のほか、 遺体切断に使われたとみられるのこぎりがあった。のこぎりは「数日前に購入した」と供述している。
室内から、殺人に関する本数冊も押収された。県警は、少年が以前からこうした本に興味を持ち、 殺害方法の参考にした可能性もあるとみている。
■不可解な行動
事件後の行動も不可解だ。母親を殺害後、遺体の頭部と右腕を切断。右腕を白色に塗り、 室内の観賞用植木鉢に差していた。「遺体をバラバラにして天井からつるそうとした」と供述している。
部屋を出た後、市内のカラオケ店に立ち寄り、自転車でインターネットカフェに向かった。約2時間、 洋楽のライブDVDを観賞後、母親の頭部を入れたショルダーバッグを持ち、タクシーで会津若松署へ。署員に 「母親を殺しました」と落ち着いた口調で申し出た。
■見えない動機
少年は、取り調べに「たまたま母親が来ただけで、誰でもよかった」と話したという。 事件から日が浅いにもかかわらず、淡々と殺害状況を説明しているという。
接見した弁護士は「事件の重大性は認識しているが、 殺害したのが母親だったのか別人だったのか区別がついてないように感じた」と話す。
2007年05月22日17時27分
福島県会津若松市の県立高校3年の少年(17)が母親(47)を殺害し、 頭部などを切断したとされる事件で、遺体の左腕にも切断を試みた形跡があったことがわかった。 殺害現場の自宅アパートから、県警が新品のロープとフックを押収していたことも判明。少年は 「遺体をバラバラにして天井からつるそうとした」と供述しており、県警は供述を裏付ける証拠とみて調べている。
これまでの調べで、遺体の頭部と右腕は切断されていたことがわかっているが、 左腕も刃物のようなもので深く切られていたという。少年は「うまく切れなかったのでやめた」 という趣旨の供述をしている。
ロープとフックはアパート2階の部屋から見つかった。ただ、実際にフックを天井に取り付けたり、 ロープを使ったりした形跡はなかった。ロープやフックについて、少年は「事前に買った」と供述しているという。県警は、 少年があらかじめ計画していたとみて、入手先の特定を進めている。
YOMIURI ONLINE
「友達できず、いつも一人だった」母殺害の高3が供述
福島県会津若松市で県立高校3年の男子生徒(17)が母親(47)を殺害した事件で、生徒は、 会津若松署の調べに対し、「高校では友達ができず、いつも一人だった」「勉強が面白くなかった」 と供述していることが20日、わかった。
同署は、生徒が高校生活になじめず、孤独感を募らせていたとみて、 事件の動機との関連を慎重に調べている。
生徒は、実家が福島県大沼郡にあり、約60キロ離れた同市の高校に通うため、 別の高校に通う弟と2人でアパートに住んでいた。
生徒が通っていた高校などによると、中学校の同級生のうち、同高に進学したのはこの生徒だけ。生徒は、 中学時代は野球部のエースとして活躍したが、高校では部活動にはほとんど参加していなかった。
2年生だった昨年9月から、クラスや学校の行事がある日を中心に、 風邪や頭痛などを理由に欠席が目立つようになり、同月の関西地方への修学旅行にも参加しなかった。出発当日の朝、 本人から「体調が悪くなった」と連絡があったという。3年生になってからは5日間登校しただけで、 4月13日の出席を最後に不登校状態になった。
同高は「いじめはなかった」としており、同じ学年の男子生徒は 「自分から人を寄せ付けない雰囲気を作っていた」と話す。
同署は、生徒の学校生活について同高関係者らからも事情を聞くなどして、動機の解明を進めている。
(2007年5月21日3時5分 読売新聞)
福島県会津若松市で県立高校3年の男子生徒(17)が母親(47)を殺害した事件で、 生徒は母親を殺害後、携帯電話でインターネットの掲示板に殺害を示唆する書き込みをしていたことが22日、 会津若松署の調べでわかった。
さらに、生徒はインターネットでチャットをしたり、自分の腕の画像を添付し、 ネット上で使っていた名前でメールを送信したりしていた。
生徒は「朝になったら自首すると決めていた。自首するまでのひまつぶしだった」と供述。同署は、 生徒は罪の意識が薄かったとみて調べている。
調べによると、生徒は15日午前1時半ごろに母親を殺害後、 自転車で同2時半ごろに市内のカラオケ店に入り、携帯電話から掲示板への書き込みを行うなどした。
同4時55分には、ネットカフェに立ち寄り、洋楽DVDを視聴した後、 同店から携帯電話で予約したタクシーで同7時前に会津若松署に行き、自首した。
(2007年5月22日14時40分 読売新聞)
会津若松市で県立高校3年の男子生徒(17)が母親(47)を殺害した事件で、福島地検と県警は、 生徒の精神鑑定を実施する方針を固めた。来週にも正式に決める。本鑑定で実施し、 裁判所の許可を受けて鑑定留置をしたうえで、数週間から数か月かけ、 精神科医らが精神状態を調べ責任能力の有無などを判断する。
少年事件の場合、家裁送致前の精神鑑定には、医師が一度だけ数時間面接する「簡易鑑定」もあるが、 会津若松署の調べに対し、生徒は落ち着いており、供述にも論理性があるため、「事件の異常性を考えると、落差が大きい」 (捜査幹部)として、時間をかけて本鑑定を行うことにした。生徒は調べに対し、「刑は受ける」と、 善悪の判断がついているように見える一方で、反省や謝罪の言葉はなく、罪の意識は感じられないという。鑑定では、〈1〉 生徒の現実と妄想との区別がついているのか〈2〉なぜ遺体を切断したのか〈3〉罪の意識が薄いのはなぜか―― などの点について分析するものとみられる。一方、生徒の国選弁護人も精神鑑定を実施する方向で検討している。
■接見の国選弁護人「知的レベルある」■
猪苗代署に拘置されている生徒に接見した国選弁護人の大峰仁、小池達哉両弁護士が23日、 同署の敷地内で記者会見した。
少年は淡々と弁護士の質問に答えていて接見を重ねているうちにここ2日ほどは和らいだ表情も見せているという。 殺害した母親のことを「母親」「母」などと呼び、丁寧な受け答えをしていて、大峰弁護士は「知的レベルはある」 と話した。
■鑑定留置中、拘置は停止■
生徒の拘置期限は6月5日だが、本鑑定が行われる鑑定留置の間は拘置が停止される。 鑑定終了後に福島地検は生徒を家庭裁判所に送致する。家裁は調査を行い、審判を開始するかどうかを決める。 必要と判断すれば精神鑑定も行う。審判が開かれると、〈1〉検察官送致(逆送)〈2〉保護処分〈3〉児童相談所長送致 〈4〉不処分――のいずれかの処分が決定する。逆送では地検が起訴の可否を判断し、 起訴されれば生徒は成人の被告と同様に刑事裁判を受けることになる。保護処分には少年院送致、児童自立支援施設・ 児童養護施設送致、保護観察の三つがある。
(2007年5月24日 読売新聞)