熊本市長が、国内初の「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト、どうも名前が良くないので、 こうのとりのゆりかごと書きたい)の設置を許可したとのこと。ただ、「こうのとりのゆりかご」は、 あくまでも赤ちゃんの命を救うための最終手段であり、ゆりかごに委ねる以前に、相談窓口などを利用して欲しい、とのこと。
子供の命を救うための、緊急避難手段として許可したようですね。首相が不快感を示したり、 閣僚が反対意見や懸念を述べることがあったりと、有象無象のプレッシャーがあったと思います。また、運用の結果によっては 「それ見たことか」という批判が噴出する可能性があります。それでも許可をした熊本市長は、よく決断されたと思います。
こうのとりのゆりかごの近くには、公的な相談窓口の連絡先や、 ゆりかごの中に相談を促すようなメッセージを置くそうです。瀬戸際での救済、という感じで、確かにそれも必要ですが、 そこに至る前に相談できるよう、窓口の存在を周知するような対策も必要かと思います。
運用が始るのは早くて1ヶ月後だそうですが、安易な子捨場として使われないことを祈ります。
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熊本の病院が「赤ちゃんポスト」の導入へ
毎日インタラクティブ
赤ちゃんポスト:熊本市長「最終の手段」安倍首相は不快感
「救われる命を尊重したのは間違いないが、難しい判断だった」。設置の是非をめぐり論議を呼んだ 「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」を許可した熊本市の幸山政史市長は5日、記者会見で厳しい表情を見せ 「使われないことがベスト」と繰り返した。慈恵病院の蓮田太二理事長も「相談窓口のことを知ってほしい」と、 捨て子を防ぎたいという思いを強調した。
市の会見は午後3時、市役所で始まり、幸山市長は「赤ちゃんポストはあくまでも最終の手段」と述べた。 迷いはあったが、「仮に使われる事態があっても『救われる命があった』ととらえたい」と決断したという。
一方、病院で会見した蓮田理事長は「赤ちゃんとお母さんの幸せにつながるようやっていきたい」 と意気込みを示し、行政や社会の連携も求めた。だが、実際に「ポスト」が使われないことを望んでいるのは市長と同じ。 捨て子が増えるのではという懸念には「赤ちゃんを黙って手放すのは難しいと思う」とも語った。【谷本仁美】
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安倍晋三首相は5日、熊本市が「赤ちゃんポスト」設置の許可を表明したことについて「(親が) 匿名で赤ちゃんを置き去りにしていくことは、私は許されないのではないかと思う」と不快感を示した。 「政府としては一般的にそうしたことを認めるということはない」とも語った。首相官邸で記者団の質問に答えた。 【渡辺創】
毎日新聞 2007年4月5日 21時48分 (最終更新時間 4月6日 2時02分)
asahi.com
熊本市が慈恵病院に、「赤ちゃんポスト」の設置を許可
2007年04月05日11時39分
熊本市の慈恵病院(蓮田晶一院長)が提出していた「赤ちゃんポスト」 の設置に伴う病院施設の変更申請について、市は5日、許可すると決めた。同日午後に記者会見で発表する。 子育てできない親から新生児を預かるこのシステムについては、厚生労働省が「(設置そのものには)違法性はない」 との見解を示す一方で、安倍首相らからは慎重な発言も相次いだ。市はこれらを踏まえ設置は認めるものの、 親子を救済するほかの対策も検討している。
赤ちゃんポストは、匿名、実名にかかわらず、 経済的な理由など様々な事情から親が育てられなくなった新生児を緊急避難的に引き取り、 置き去りや殺害を防ぐのが目的の一つ。慈恵病院は「こうのとりのゆりかご」と呼んでいる。 最短なら約1カ月後に運用が始まる見通しだ。
病院の外壁に「窓口」(縦45センチ、横60センチ)を設け、 内側の個室に体温と同じ36〜37度に温めた保育器を置く。室内に監視カメラを置き、 保育器に新生児が置かれるとブザーが鳴り、24時間態勢で待機している看護師らが保護する。 この個室は新生児相談室という位置づけで、駐車場管理など医療法が認めた「付随業務」として病院側が運営する。
ただ、匿名で預けられれば育児放棄の助長や、 自らの出自を知るといった子どもの権利を侵すなどの指摘もある。このため、 病院の玄関やポスト脇には公的相談窓口の連絡先を明示し、ポスト内に「相談して下さい」 とのメッセージなどを記した手紙も置く。相談があれば悩みを聞き、子どもを手放すことを思いとどまるよう促す。
実名を名乗れば、戸籍上は実子として養親が迎える特別養子縁組制度があることも伝える。 「今は育てられないが後で引き取りたい」という場合は、 児童相談所を通じていったん乳児院に預けるなどの方法を紹介する。
相談もなく置かれた場合、病院側は通常の保護責任者遺棄事件と同様に県警や児童相談所に連絡する。 児童福祉法に従い、新生児は「棄児(きじ)」として乳児院に預けられる。その後も親が名乗り出なければ、市長が命名し、 戸籍を定める。
ポストの設置について厚労省は「違法性はない」としているが、 預けた側の保護責任者遺棄などの容疑については、熊本県警が「ケースに応じ必要な捜査をする」との考えを表明している。
病院側は、許可を受けて病棟の改築工事に入る。工期は3週間から1カ月程度という。
同病院の蓮田太二(はすだ・たいじ)理事長らは04年5月、 すでに同様のポストが普及していたドイツのキリスト教系病院などを視察。日本国内で新生児を置き去りにしたり、 トイレに産み落としたりする事件が絶えないことから昨年12月、医療法に基づき、 市保健所に施設変更の申請を出していた。
市は、国内初の事例で「一地方自治体だけでは判断できない」と、幸山政史市長が2月、 厚労省に関係法令との整合性について照会。病院への立ち入り調査などでも問題がなかったため、最終調整を進めていた。