石川県にある北陸電力の志賀原発で、定期点検中に約15分間ほど、 臨界状態を制御できなくなるトラブルが発生していたとのことです。これは99年の出来事で、 北陸電力はこの事実を国に報告せず隠蔽していたようです。
臨界状態というのは核反応が継続している状態で、制御しなければどんどん進み、やがては外部に放射能が漏れる、 といった事故になります。志賀原発では、作業員が被曝するなどの被害は無かったようですが、 点検中で原子炉の上の蓋が開いていたとのことなので、制御に失敗していたら放射能漏れ事故、 あるいはそれ以上の大事故になっていた可能性もありますね。恐ろしい・・・・
北陸電力に限らず、全国の電力会社で、不都合な出来事の隠蔽やデータの改ざんが発覚しています。 電力会社への不信は募るばかりですが、電力会社の体質が隠蔽・改ざん体質なのか。発電所の現場では、 この程度のトラブルは発生の頻度が高くて、報告するまでも無い、という感覚になってしまっているのか?
99年と言えば、9月に東海村の核燃料施設で臨界事故が発生して、2名が亡くなっています。 志賀原発の問題は6月ですが、もしこのトラブルが公表されていれば、教訓に出来た可能性はありますね。 過ぎたことを論じても仕方がありませんが・・・・
asahi.com
原発制御棒はずれ一時臨界に 北陸電力、国に報告せず
2007年03月15日12時31分
北陸電力の志賀原発1号機(石川県志賀町、沸騰水型、出力54万キロワット)で、 99年の定期検査中に、挿入されていた制御棒3本が想定外に外れ、停止していた原子炉が一時、 核分裂が続く臨界状態になっていたことが15日わかった。すぐ緊急停止信号が出たが制御棒は元に戻らず、 臨界状態は制御棒が戻るまで15分ほど続いた。その間、原子炉の制御ができなかったことになる。 北陸電力はこうした事実を国に報告していなかった。
経済産業省原子力安全・保安院は「3本の制御棒が外れた想定外の臨界事故と認識している。 極めて重大だ」とし、法令違反の疑いもあったとみて同日午後、同社に同1号機の運転停止を命じるとともに、 事実関係を調べて報告するよう法令に基づいて指示する。
北陸電力によると、トラブルは99年6月18日午前2時すぎに起きた。 定期検査中で原子炉は上ぶたが開いた状態で停止していた。 89本ある制御棒はすべて炉の下から挿入された状態になっていたが、 そのうちの3本が制御弁の操作ミスで下に落ちてしまい、核反応が始まって臨界状態になった。この時の出力は1% 未満だったとしている。
すぐ、核分裂を起こす中性子の量が多いという警報が出たが、安全装置が正常に作動せず、 制御棒は元に戻らなかった。その後、作業員らが手動で弁を操作するなどして約15分後に制御棒が元の挿入状態に戻った。
作業員らの被曝(ひばく)などはなかったが、同社は当時、 発電所長の判断でこうした事実を国へ報告していなかった。昨秋以降、電力会社のデータ改ざんが相次いだことを受け、 国の指示で進めた総点検の中で、作業員への聞き取り調査などから事実が浮上したという。
保安院の市村知也・原子力事故故障対策室長は会見で、 「最近明らかになった東北電力や東京電力の事例よりも悪質な可能性がある」 と事態を重視している姿勢を改めて明らかにした。
会見では、同原発の安全審査では、 制御棒の引き抜きトラブルは1本までしか想定されていないと説明された。また、当時、 中央制御室を含めて複数人の作業者が関係していた可能性が高い。 業務日誌など所内で次の運転グループに引き継がれた明確な証拠は残っていないという。
YOMIURI ONLINE
北陸電力が志賀原発の臨界事故隠す、制御棒外れ15分
北陸電力志賀原子力発電所1号機(石川県志賀町)で、1999年6月18日、 定期検査のために停止していた原子炉から突然、出力を制御するため下方から炉心に挿入していた「制御棒」 89本のうち3本が外れ、原子炉が再稼働状態に入る事故が起きていたことが、15日わかった。
原子炉は緊急停止せず、この状態は15分続いたが、北陸電力は当時、十分な原因調査を行わなかったうえ、 記録を残さず国にも報告していなかった。経済産業省原子力安全・保安院は、臨界事故にあたるとみており、 原子炉等規制法に基づく報告義務違反にあたる可能性を含め事実関係を把握し、 安全が確認できるまで1号機の運転を停止するよう15日午後、指示する。制御棒が外れたのは、99年6月18日午前2時17分ごろ。制御棒1本の急速挿入試験のため、 残り88本を動かす水圧制御弁を閉じる作業を進めていたところ、誤操作で3本が炉心から抜けた。 原子炉の制御システムは、核分裂反応が継続する「臨界」に陥ったことを感知し、緊急停止信号を出したが、 この3本を再挿入するために必要な加圧用窒素タンクの準備が不十分だったことなどから、ただちには再挿入できなかった。
結局、弁の操作などで3本が炉心に入り、臨界が終息したのは15分後だった。臨界時の出力は定格の1% 未満だったが、原子炉の制御が事実上、15分間効かない状態が続いたことになる。さらに、定期検査のため、 炉心を覆う圧力容器と格納容器の上ぶたが外されており、放射能を封じ込める機能が低下していた。ただ、 原子炉建屋内の原子炉周辺には作業員がおらず、被曝(ひばく)事故は起きなかった。
予期せぬ形で原子炉が起動し、臨界状態に陥ったことから、経済産業省原子力安全・保安院では 「想定外の重大事象で臨界事故にあたる」としている。
今回の事故は原子力発電所のデータ改ざん問題に関する社内調査で判明した。 93年7月に運転を開始した志賀原発1号機は出力54万キロ・ワット。 沸騰水型で制御棒は原子炉の下方から挿入するタイプ。制御棒が入らない場合、 核分裂反応を終息させる働きのあるホウ酸水を炉心に注入するが、今回は注入していなかった。
(2007年3月15日14時0分 読売新聞)