胃炎や胃潰瘍の原因とされているピロリ菌を研究する国際グループが、ピロリ菌の遺伝情報を解析した結果、
5万8千年前のアフリカで人類は既に胃炎や胃潰瘍に悩まされていた可能性があることを明らかにしたとのこと。
研究では、ピロリ菌の起源が1万年以上さかのぼることがわかってきているようですが、
5万年前までさかのぼるかどうかはあくまで可能性ですね。
ピロリ菌が広まっていった過程と、人類が広がっていったと思われる過程が重なっていることから、 このような可能性があるようです。菌の遺伝情報や地理的な分布を比べたりといった、分子遺伝学と呼ばれる手法を取入れると、 こんな可能性が見えてくるようですね。面白い技術ですね。
最近は胃潰瘍など治療で、ピロリ菌を殺してしまう薬を飲むことがありますが、もし、 ピロリ菌が5万年以上もの長き間、人類の胃の中で共存してきたとすれば、それを胃の中から根絶するのは難しい気がしますね。
asahi.com
胃炎、5万年以上前から? ピロリ菌遺伝情報分析で判明
2007年02月08日10時29分
5万8000年前のアフリカにいた人類は、すでに胃炎や胃潰瘍(かいよう)に悩まされていた―― こんな可能性を、独マックスプランク研究所などの国際研究グループがピロリ菌の遺伝情報を分析して明らかにした。 民族ごとに保有する菌の性質が微妙に異なる特徴を利用し、人類起源を探る分子遺伝学の手法を採り入れた。 8日付の英科学誌ネイチャー(電子版)で発表した。
ピロリ菌は幼少期に親などから感染する場合が多く、慢性胃炎や胃潰瘍、胃がんの原因にもなるとされる。 詳しい感染経路などは現在も不明のままだが、これまでの同グループなどの研究で、 起源は1万年以上前までさかのぼることがわかってきた。
研究グループは、世界の51民族から集めた769人分のピロリ菌を分析し、 遺伝情報の変異と地理的な分布などを比べた。その結果、最も古いタイプの菌は東アフリカ型で、その後、欧州型、 アジア型、アメリカ型と進化を遂げたことがわかった。現代人(ホモ・サピエンス)が発祥の地とされるアフリカを出て、 世界各地に広まっていった過程に重なる。
研究グループの一人で米ベイラー医大の山岡吉生准教授(分子病原学)は「ピロリ菌を調べることで、 人類進化の過程がより鮮明に見えてきた。なぜ人とピロリ菌はこれほど長く共存してきたのか、新たななぞも深まった」 としている。