昨日ですが、政府の教育再生会議が、「いじめ問題への緊急提言」を決定・発表しました。いじめに対する対策、
心構え的なものが述べられていて、全体の内容については特に異論があるものではないと思いますが、
実際にいじめ問題にあたる現場の教師には提言に批判的なようです。
文部科学省の幹部の中には「けんかを売られているような感じがする」と言った方もおられるとか。
子供たちがいじめが原因で自殺、ということが社会問題化してきている折り、 この提言には政府として取組む姿勢をアピールする、という狙いがかなりあると思います。実際、 文部科学省や各教育委員会がいじめ問題の解決に懸命に取組んでいるのか見えないです。いじめの事実の隠蔽、 といったことは良く出てきますが、これは報道の偏向なのでしょうか。
教師は提言に批判的ということですが、引用記事中の 『学校の先生がきちんと指導できていないという発想に立ったもので本末転倒な話だ。現場の先生の神経を逆なでし、 処分されるとなればますますいじめを隠そうとする』との発言は、尊大な感じがして、 どうも一般社会の感覚とは乖離しているように感じます。教師の世界は、処分が明示されれば、 保身第一で臭いものにはますます蓋、という世界なのでしょうか。
先に書いたように、提言の総論として、特に異論は無いのですが、社会奉仕をもって懲罰とする、
というのは止めて欲しい。これについては以前に別の記事で書いたことがあります。
ただ、提言の内容は応急手当にすぎない、と思うと共に、学校に焦点を当てた提言にならざるを得ないというところに、
役所の縄張り、そして教育再生会議の守備範囲という限界を感じますね。
いじめる側はいじめられる側の「痛み・苦しみ」を想像できない、
いじめられる側も簡単に死を選びすぎる傾向があって、現在のような状況が引き起されていると推察します。
言わば、子供たちの人間的な感性や価値観の問題であり、これは学校教育にももちろん関係はありますが、家庭はもちろん、
日本の社会全体が関わって、対処をしていかないと根本的に解決できない問題でしょうね。
特に、他人の痛みや苦しみを思いやるという感覚を育てることや、 いじめられた子供が最後まで安心して頼ることが出来る場所として、親や家庭の役割が非常に大きいと思っています。
私も親としてこのような役割を果していけるのだろうか?確たる自信はもてませんが、 役割を果すべく努力してゆきたい。
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「代替刑」として社会奉仕?
毎日インタラクティブ
教育再生会議:「いじめ問題への緊急提言」を決定
政府の教育再生会議(野依良治座長)は29日午前、首相官邸で第3回全体会議を開き 「いじめ問題への緊急提言」を決定、発表した。相次ぐいじめによる自殺を受け、いじめをした子どもに対する指導、 懲戒の基準を明確にし、社会奉仕や別教室での教育など「毅然(きぜん)とした対応」を取るよう、学校に求めた。 「いじめを見て見ぬふりをする者も加害者」との指導を学校が子どもに徹底することも促し、 いじめに加担するだけでなく放置・助長した教員も懲戒処分の対象とすることを明記した。
安倍晋三首相は会合であいさつし、提言について「即実行できるものは実行する」と述べ、 対策を急ぐ考えを示した。再生会議は、緊急提言を文部科学省や都道府県教委を通じて学校、保護者に呼びかける。
提言では「いじめは反社会的な行為として絶対許されない」との認識を強調。いじめた子どもへの懲戒、 指導については「社会奉仕、個別指導、別教室での教育」を校内規律を維持する例として示した。 懲戒では出席停止の明記も検討されたが、見送られた。池田守男座長代理(資生堂相談役) は終了後の記者会見で委員の意見が分かれたことを認めたうえで、「(出席停止も懲戒基準の) 一つの選択肢としてあっていい」との見解を示した。
教員への処分については、児童・生徒をいじめた場合の処分を規定した東京都教委などを例に、 全国の教委に同様の規定の導入を呼びかけた。
また、「いじめを解決するのがいい学校」との認識を示し、学校による隠ぺいの排除を図った。 学校や教委、保護者が連携していじめ撲滅に全力を挙げることや、 教委が学校支援のためのサポートチームを結成するよう要請。いじめを理由とする転校が認められていることを児童・ 生徒や保護者にしっかり伝えるよう注意喚起したうえで「いじめの解決を図るには、家庭の責任も重大」と指摘した。
再生会議は10月25日に「いじめ防止の緊急アピール」を発表している。その後も同様の事件が続き、 重視姿勢を示す必要があると判断し、「社会全体に対する再生会議の(いじめ撲滅の)決意表明」(池田氏)として、 提言を取りまとめた。【平元英治】
◆政府の教育再生会議が29日まとめた緊急提言は次の通り。
「いじめ問題への緊急提言」
すべての子どもにとって学校は安心、安全で楽しい場所でなければなりません。保護者にとっても、 大切な子どもを預ける学校で、子どもの心身が守られ、笑顔で子どもが学校から帰宅することが、何より重要なことです。 学校でいじめが起こらないようにすること、いじめが起こった場合に速やかに解消することの第1次的責任は校長、教頭、 教員にあります。さらに、各家庭や地域の一人一人が当事者意識を持ち、 いじめを解決していく環境を整える責任を負っています。教育再生会議有識者委員一同は、いじめを生む素地をつくらず、 いじめを受け、苦しんでいる子どもを救い、さらに、 いじめによって子どもが命を絶つという痛ましい事件を何としても食い止めるため、学校のみに任せず、 教育委員会の関係者、保護者、地域を含むすべての人々が「社会総がかり」で早急に取り組む必要があると考え、 美しい国づくりのために、緊急に以下のことを提言します。
(1)学校は、子どもに対し、いじめは反社会的な行為として絶対許されないことであり、かつ、 いじめを見て見ぬふりをする者も加害者であることを徹底して指導する。<学校に、 いじめを訴えやすい場所や仕組みを設けるなどの工夫を><徹底的に調査を行い、 いじめを絶対に許さない姿勢を学校全体に示す>
(2)学校は、問題を起こす子どもに対して、指導、懲戒の基準を明確にし、毅然とした対応をとる。 <例えば、社会奉仕、個別指導、別教室での教育など、 規律を確保するため校内で全教員が一致した対応をとる>
(3)教員は、いじめられている子どもには、守ってくれる人、 その子を必要としている人が必ずいるとの指導を徹底する。日ごろから、家庭・地域と連携して、子どもを見守り、 子どもと触れ合い、子どもに声をかけ、どんな小さなサインも見逃さないようコミュニケーションを図る。 いじめ発生時には、子ども、保護者に、学校がとる解決策を伝える。いじめの問題解決に全力で取り組む中、 子どもや保護者が希望する場合には、いじめを理由とする転校も制度として認められていることも周知する。
(4)教育委員会は、いじめにかかわったり、いじめを放置・助長した教員に、懲戒処分を適用する。 <東京都、神奈川県にならい、全国の教育委員会で検討し、教員の責任を明確に>
(5)学校は、いじめがあった場合、事態に応じ、個々の教員のみに委ねるのではなく、校長、教頭、 生徒指導担当教員、養護教諭などでチームを作り、学校として解決に当たる。生徒間での話し合いも実施する。 教員もクラス・マネジメントを見直し、一人一人の子どもとの人間関係を築き直す。教育委員会も、 いじめ解決のサポートチームを結成し、学校を支援する。教育委員会は、学校をサポートするスキルを高める。
(6)学校は、いじめがあった場合、それを隠すことなく、 いじめを受けている当事者のプライバシーや二次被害の防止に配慮しつつ、必ず、学校評議員、学校運営協議会、 保護者に報告し、家庭や地域と一体となって、解決に取り組む。学校と保護者との信頼が重要である。また、 問題は小さなうち(泣いていたり、寂しそうにしていたり、けんかをしていたりなど)に芽を摘み、 悪化するのを未然に防ぐ。<いじめが発生するのは悪い学校ではない。いじめを解決するのがいい学校との認識を徹底する。 いじめやクラス・マネジメントへの取り組みを学校評価、教員評価にも盛り込む>
(7)いじめを生まない素地をつくり、いじめの解決を図るには、家庭の責任も重大である。保護者は、 子どもにしっかりと向き合わなければならない。日々の生活の中で、ほめる、励ます、しかるなど親としての責任を果たす。 おじいちゃんやおばあちゃん、地域の人たちも子どもたちに声をかけ、子どもの表情や変化を見逃さず、 気付いた点を学校に知らせるなどサポートを積極的に行う。子供たちには「いじめはいけない」「いじめに負けない」 というメッセージを伝えよう。
(8)いじめ問題については、一過性の対応で終わらせず、 教育再生会議としてもさらに真剣に取り組むとともに政府が一丸となって取り組む。
毎日新聞 2006年11月29日 11時31分 (最終更新時間 11月30日 4時22分
続発するいじめ事件に関し、政府の教育再生会議が29日、緊急提言をまとめた。焦点の一つとして、 いじめを放置・助長した教員に懲戒処分を適用することを求めた。一方で、 いじめ対策への取り組みを教員評価につなげるよう提言。努力した教員にはアメを与えるとも受け取れる内容だ。 現場のいじめ対策にどんな影響があるのか。反応の声もさまざまだ。【荒川基従、高山純二、佐藤敬一】
東京都内の区立中学校長は 「学校の先生がきちんと指導できていないという発想に立ったもので本末転倒な話だ。現場の先生の神経を逆なでし、 処分されるとなればますますいじめを隠そうとする」と強く批判する。一方、“アメ”に関しては「何をもって、 いじめが減ったか増えたか、取り組みが進んだか進んでないかを評価するのか。現場の実情とはかけ離れた考え方だ。 学校はユートピアではなく、けんかもあればいじめもある。特効薬はなく、 現場は一つ一つ全力を挙げて対応していくしかない」と憤りを込めて話した。
一方、別の区内のある小学校長は「いじめ自殺があった学校では、 校長らがマスコミを前に謝罪しているが、一過性に過ぎない。現場の教員は『いじめを見逃したら教師生命がない』 というくらいの真剣さが必要だ。その意味で懲戒処分を盛り込んだことは評価できると思う」と話す。
ただ、緊急提言の中にいじめた子への「指導・懲戒」案として、 奉仕活動をさせることが掲げられていることに関しては「社会奉仕が有効なんですかね。きれいごと過ぎますよね」 と疑問符もつけた。
提言通りなら、教師の懲戒処分は各地の教育委員会が行うことになる。 94年に大河内清輝君いじめ自殺事件があった愛知県。名古屋市教委のある幹部は提言内容を読み「ちょっと厳しいな……」 と漏らした。「現場の先生方の苦しさをもう少し理解してほしい。先生だって失敗はあるが、一生懸命仕事をしている。 その結果として懲戒処分にされたら、やってられない」と同情的に語った。
一方、提言に文部科学省幹部からも批判の声が漏れた。内容の多くは、 すでに同省が各都道府県教委などに指導・助言をしている。ある幹部は「なんで今ごろこんなものを(提言するのか)……。 けんかを売られているような感じがする」と批判した。
毎日新聞 2006年11月30日 0時09分 (最終更新時間 11月30日 8時26分)
アホかいな・・・
全国のボランティアさん、抗議デモしよう!!
しかし、懲戒や代替刑の一つとして社会奉仕をさせよう、という流れになってきているようです。
困ったものですね。
「社会活動」というのはどうなのでしょう。
懲罰というよりも、少し学校から離れて社会の厳しさに接するのも悪くはないかもしれません。
コメントありがとうございます。
>「社会活動」というのはどうなのでしょう。
>懲罰というよりも、少し学校から離れて社会の厳しさに接するのも悪くはないかもしれません。
なるほど「社会活動」で社会の厳しさに触れる、という表現であれば、懲罰的なニュアンスは薄く感じます。
厳しい指導、といったところでしょうか。
しかしながら、社会の厳しさに触れる、ということは、懲罰的なニュアンスとは関係なく、通常の授業の一環としてやるべきであろう、とも思います。
私の住む地域では、確か中学で社会体験(職業体験ですが)が何時間かあって、そういった機会が設けられているようです。