先の週末に開幕したロンドンオリンピック。
個人的な印象では、開幕するまで今年がオリンピックイヤーという感じがしなかったのですが、ここ数日のTVの番組表を見ているとやはりオリンピックなのですね。
さて、そのオリンピックの柔道では、日本の海老沼選手(66キロ級)の試合で、審判の判定が覆るという異例の展開に。
海老沼選手はこの判定が覆ったことで準決勝に進出、しかし準決勝では敗れて最終的には3位銅メダルという結果になっています。
スポーツ競技では審判の判定は絶対、というのが多い気がしますが、柔道では通常の審判以外に、「ジュリー」という「審判委員」がおり、審判の誤審が認められた場合は、このジュリーが再判定をアドバイスするシステムになっているようです。
相撲で言うなら、行司の判定に物言いをつける、というイメージでしょうか?
誤審を防ぐ・そのために対策をする、というのは意味があることだとは思いますが、判定が正反対になってしまうようでは、かえって審判自体のレベルに疑問が生じますね。
審判のレベルを上げて、審判委員が出てくる幕をなくすのが本筋でしょうが、そんなことをしている時間も人材もないのであれば、いっそ、勝負が判定になった場合は、審判ではなく審判委員が判定を下す(ボクシングみたいですが)といったシステムの方がマシな気がします。
競技の審判が信頼できないと、選手の士気にも影響があるでしょうし、ひいては柔道そのものの公平性にも疑問が出てきてしまいそうです。
産経ニュース
異例の判定やり直し、海老沼勝利 男子66キロ級準々決勝
2012.7.29 22:27 [柔道]
ロンドン五輪第3日、柔道男子66キロ級の海老沼匡(パーク24)が、チョ・ジュンホ(韓国)を破った準々決勝は、審判員の判定が覆るという異例の展開だった。
延長戦でも決着がつかず、もつれ込んだ旗判定。畳上の審判員3人が高々と挙げたのは、すべてチョの優勢を示す「青」だった。これに戸惑いの表情を浮かべたのは、海老沼だ。
延長中盤に、海老沼の小内刈りが有効とされながらも、取り消された経緯もあり、観客からは大きなブーイングが起こった。
すると、畳の外にいた審判委員と審判員が協議を開始。その結果、再度、旗判定を行うことに−。今度は3人の審判員全員が、海老沼の優勢を示す「白」を挙げた。
生中継していたテレビ番組の解説者は「見たことがない」とあ然。敗れた韓国のチョは畳を降りても納得いかない表情だった。
2012.7.30 05:21 [柔道]
柔道男子66キロ級の準々決勝で、海老沼とチョ・ジュンホの試合で下された旗判定が、試合場全体の審判を統括するジュリー(審判委員)の判断で、覆される前代未聞の事態があった。
問題のシーンは海老沼−チョ戦の終了直後。海老沼は延長戦の1分過ぎ、一度は有効と判定され取り消される小内刈りを放っていた。その後は一進一退で時間が切れ、旗判定に委ねられた。主審と2人の副審は青のチョを支持。3−0で一度はチョに勝ちが告げられた。
ところが、バルコス大会審判委員長が3人の審判を呼び集め、判定のやり直しを指示。再び行われた旗判定は3−0で白の海老沼を支持する異例の逆転裁定となった。
試合後、バルコス委員長は「我々の責任は柔道精神を維持すること。真の勝者が勝者として畳を降りる状況を作った」と説明した。
国際柔道連盟(IJF)は北京五輪後のルール改正で、ジュリーが最新の映像監視システムで全試合場の判定の正誤を指摘するシステムを導入。一本、技ありなど技の効果の判定は審判に決定権があるが、明らかな誤審が認められた場合は、ジュリーのアドバイスで訂正されるケースが増えた。
この試合、一度は「有効」と判定された海老沼の技以外に大きな判断材料がなく、試合場に配置された3人のジュリーはいずれも「白(海老沼)の勝ちは疑う余地がない」と判断。バルコス委員長の最終決断で、主審と2人の副審に「旗判定を覆すよう指示した」という。
バルコス委員長は「(判定を覆したのは)柔道精神の問題。どの国とどの国の対戦かは問題じゃない。われわれにヒューマンエラーはつきものだが」と話した。
一方で、日本の柔道関係者は「ジュリーが前に出すぎて、主審と副審が主体的な判断をできないケースが目立つ。審判のレベルの低下につながる恐れがある」と現行のシステムに警鐘を鳴らす。
今大会には、IJFのライセンスを持つ国際審判25人が世界各地から集められ、コンピューターによる抽選で試合が割り振られるシステムになっている。(森田景史)