熊本市の慈恵病院というところが、事情により子育てが出来ない親が赤ちゃんを託すことが出来る「赤ちゃんポスト」 の導入を決めたとのことです。赤ちゃんポストシステムについては、ドイツが先進国だそうです。
親が子育てを出来なくて子供が殺されたり、虐待されることを考えれば、「赤ちゃんポスト」に子供を託す方が、
子供にとっては遙かにマシなのは間違いないと思います。
しかし、その一方で、モラルや道徳といった観念が後退している現在の状況では、
親の都合による安易な子捨場になってしまう危険性が高いだろうとも思います。
安易な子捨場に堕とさないためには、引用記事にもあるように、事前に何らかのルールが必要と思いますが、
子供の命を救いたい、ということであれば、事前ルールは受入れの間口を狭めることになりそうで、これはこれで難しい。
結局は、子供を託す親の倫理観が頼みの綱でしょうか。
実際に導入する時は、「こうのとりのゆりかご」という名前にするそうです。「赤ちゃんポスト」 では言葉の印象が良くないですね。誰が命名又は翻訳したのかわかりませんが、もし赤ちゃんポスト以外の名称にしていたら、 趣旨の受取られ方が違っていたかもしれません。
asahi.com
熊本の病院が「赤ちゃん引き取りポスト」 賛否両論
2006年11月09日09時12分
熊本市の慈恵病院(蓮田晶一院長)が、様々な事情で子育てができない親が乳児を託す「赤ちゃんポスト」 の導入を決めた。「こうのとりのゆりかご」の名で年内にも受け付けを始める方針。病院側は 「捨てられて命を落とす赤ちゃんや中絶せざるを得ない母親を救いたい」と説明するが、 子捨ての助長につながるとの意見もあり、論議を呼びそうだ。
同病院によると、病棟の外壁に縦45センチ、横64センチの穴を開けて「窓口」にする。 空調設備のある室内に保育器1台を置き、24時間態勢で対応。外から乳児が置かれると院内のブザーが鳴り、 助産師らが駆けつける。
多くは乳児院などに預けるが、同病院は、 実の親の了解を得た里親が戸籍上の実子として育てる特別養子縁組制度の適用も目指す。 ポストを訪れる親が名乗り出る仕組みをつくりたい考えだ。
同様の制度は00年にドイツ・ハンブルクで生まれた。キリスト教系の社団法人が設置。 「子捨てを助長する」という反発もあるが、同国内に70カ所以上あるという。
慈恵病院の蓮田太二理事長ら幹部は04年5月に現地を視察し、今年に入って県、市、 警察など関係機関に趣旨を説明。保護責任者遺棄罪との関係では熊本県警は「病院の管理下にある場所」(熊本南署) としており、他にも異論は出ていない。ポスト設置に伴う施設変更届を市保健所に出せば着工できる段階という。
蓮田理事長は「望まれない子ども」がいることと若年層の中絶防止を導入理由に挙げる。 「ポストの設置で母子ともに救済したい。疑念を持つ人もいるだろうが、捨て子を見て見ぬふりをして『死なせてもいい』 という論理が通るか。子どもに罪はない」と話している。
法務省刑事局は「犯罪が成り立つかどうかは(個々の事例で)集めた証拠に基づき判断されるべきだ」 として違法性の判断についてコメントを控えている。
厚生労働省広報室は「制度的に前例がないため、どの課の担当業務なのかわからない。 コメントはできない」としている。
毎日インタラクティブ
赤ちゃんポスト:熊本の病院が設置検討 新生児匿名で託す
熊本市島崎の慈恵病院(蓮田晶一院長)が、さまざまな事情で子育てができない親が新生児を匿名で託す 「赤ちゃんポスト」の設置を検討していることが分かった。全国初の取り組みで、 同病院はすでに保健所などと協議を進めており「出来るだけ早く設置したい」(徳光正敏・同病院事務部長)としている。 「赤ちゃんポスト」はドイツで設置の例がある。
同病院によると「ポスト」は既存の病院建物に穴(縦約45センチ、横約65センチ)を開け、 外から開けられるようにし、内側に「こうのとりのゆりかご」と名づけた箱を取り付ける。 箱の内部は保育器と同じ室温36度に保ち、24時間受け付ける。赤ちゃんが置かれるとブザーが鳴り、 院内の看護師らが駆けつける体制をとる。また、箱の中に赤ちゃんを置いた親らへのメッセージや、 子供を引き取りに来る場合の手続きについて記した手紙を入れる。病院は市や児童相談所、県警などに届け、 児童福祉法に基づき施設や里親に引き渡す。
同病院は産婦人科のほか、内科、小児科、外科などの診療科目を持つ総合病院だが、 カトリック系で人工妊娠中絶をしていない。同病院の蓮田院長は9日会見し 「世の中にせっかく生まれてきた命を幸せにはぐくみたいと考えた」と設置の趣旨を説明した。
ただ、一連の乳児受け入れ行為については「置き去り」とみなされ、 保護責任者遺棄罪に触れる可能性もある。
法務省刑事局は「『赤ちゃんポスト』 に置くことが赤ちゃんを保護のない状況に置くことになるかどうかは、具体的な事実関係をみないと分からない」 としたうえで「保育器が壊れるなどのケースも想定される。およそ危険がありえないといえるならば(同罪が) 適用されない可能性はある」としている。
ドイツの「赤ちゃんポスト」について研究している大阪大の阪本恭子・特任研究員(生命倫理)は 「児童虐待などから子どもを守るという設置者側の趣旨は理解でき、基本的には反対する立場にない。ただ、 安易な育児放棄につながらないよう、事前のルール作りが必要」と指摘する。
一方、日本大法科大学院の板倉宏教授(刑法)は 「子どもをポストに入れた親は間違いなく保護責任者遺棄に問われるだろうし、 この制度をこのまま認めれば社会全体に捨て子を容認、奨励することにもつながると思う」と指摘した。【高橋克哉】
◇赤ちゃんポスト 病院などが設置した「ポスト」に、養育できない赤ちゃんを親が運び入れる仕組み。 内部は暖かく、入れると看護師がすぐに取り出すシステム。ドイツでは00年に取り組みが始まり、 05年現在で78カ所が存在。その後も増加傾向にあり、ドイツ以外でも設置する国は増えている。だが、 ドイツでもいまだに法的な位置付けがあいまいで、設置以後、捨て子が増えたというデータがない一方、 保護者による乳児殺害が減ったというデータもなく、評価の是非は難しいという。
毎日新聞 2006年11月9日 18時10分