2012年03月20日

耐震診断結果を「低く」改ざん?

富山県の滑川市民会館の耐震診断結果が、市職員の指示で本来の調査結果より低い値に改ざんされている疑いがあるそうで、現在内部調査を行っているとのこと。

 

建築の場合、Is値(構造耐震指標)というのがあり、この指標値を算出することで建物の耐震性を評価しているようです。

問題の市民会館のケースでは、調査報告によるとIs=0.68で、これは0.6以上で「倒壊の危険性は低い」そうです。

この結果に対して市職員が改ざんの指示を出し、最終的にIs=0.217にしたとのこと。0.3未満の場合は、「倒壊の危険性が高い」と評価されるとのこと。

 

以前大きく問題になった構造計算の偽装は、耐震性不足を満足と改ざんしていましたが、これは逆のケースですね。

改ざんの理由は、耐震工事の理由づけのためと考えられるようです。

 

前市長によると、会館は老朽化していて耐震云々に関係なく改修する方針だったそうで、無理に理由づけをする必要は無い、と話しているとのことですが・・・

これは、例えば耐震性が低い場合、改修工事に際して国や県から補助金が出る(結果的に市としては工事費を安くできる)とか、そういう制度を利用したいがための改ざんのような気がします。

 

そういう制度があるのかどうか詳しく知りませんが、何度も調査した会社に書換えさせたということは、どうもそんな動機があるように思います。

改ざんの動機が、どういうレベルから出てきたものなのかも問題でしょうね。担当者の独断、あるいは部の意志、もしくは、市長レベルとか?

 

技術者として気になるのは、結果的に報告書の改ざんを行うことになった調査会社は、倫理的にどうなんだろうか、という点。

もちろん、資格試験問題としてはアウトになるのは明らかでしょうが、これが「報告書を書直さないと業務費は払わない」といった展開だったら?現実的な対処方法は考えさせられるものがあります。

YOMIURI ONLINE
耐震診断、低い数値に誘導?市側が書き換え要求

富山県の滑川市民会館大ホールの地震に対する強度を示す構造耐震指標(Is値)が実際より低く公表されていた問題で、2009年の公表当時、同市の担当者が、耐震診断をした建築設計会社に何度も報告書の書き直しを求め、不適当な数値を記載した文書を作成させていたことがわかった。

市は、耐震工事を行うために資料が不正に書き直された疑いがあるとみて内部調査を行っており、19日、市議会全員協議会で調査結果を報告する。

09年2月に市財政課が市議会総務文教消防委員会に提出した資料で、同ホールのIs値は0・217とされた。Is値は大きいほど安全性が高く、0・3未満では「倒壊の危険性が高い」とされる。ところが、昨年12月、市が耐震強化を図るために各建物の資料を見直したところ、同ホールのIs値は0・68で、「倒壊の危険性は低い」とされる0・6以上だったことが判明した。

関係者によると、09年1月末、耐震診断を請け負った富山市の設計会社が滑川市に、同ホールのIs値を0・68とした診断結果を提出した。しかし、2月3日の総務文教消防委員会までの数日間に市の担当者が設計会社に電話で数値や診断の文言の書き換えを指示し、同社は10回近くにわたって電子メールで提出し直した。最終的に、Is値は0・217で、「大地震時(震度6強)には屋根が崩壊する危険性がある」とする報告書が完成した。設計会社のメールの送信履歴からやりとりが明らかになったという。

この診断結果に基づき、市は災害時避難場所に指定されている同ホールに耐震補強工事を施す検討をしたが、10年2月に就任した現職の上田昌孝市長の方針でストップしていた。

中屋一博・前市長は「ホールは老朽化が進んでいて改修は必要という認識になっていた。いずれにしても改修する方針だったのだから、数値を書き換える必要は全くない。ただ、職員が(Is値を)間違って書いてしまったとしたら当時の責任者として不徳の致すところだ」と話している。

(2012年3月19日21時51分  読売新聞)

posted by いさた at 19:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 建築関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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