福島県の公共工事談合が東京地検特捜部により摘発され、 福島県政に影響力を持っているとされる容疑者が逮捕されたとのこと。この摘発は、 7月にあった三重県の水谷建設の脱税事件に関係して行われています。
三重県から福島へ、という事件の流れが意外な感じがしますが、この摘発についても、 本丸へ一歩近づくためのものと思われます。水谷建設脱税から、芋づる式に本丸へと近づいている、というところでしょうか。
現時点での本丸は、福島県知事・佐藤栄佐久氏や、福島県庁のように見受けられますが、 東京地検が目指しているのはそこなのか、それとも、中央政界につながるその奥があるのか? 私にはまだ先があるだろうと思っています。
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福島県知事支援者ら逮捕 談合容疑、仕切り役
2006年09月05日11時34分
福島県発注の公共工事をめぐり、ゼネコン各社が下水道整備工事で談合した疑いが強まり、 東京地検特捜部は4日夜、談合の仕切り役だったとされる同県内の設備会社社長、辻政雄容疑者(59) ら2人を競売入札妨害(談合)容疑で逮捕するとともに、同県内の建設大手「佐藤工業」(福島市) などを同容疑で捜索した。特捜部は、 辻社長が県側に対して建設業者との口利きをしていた事実はないかなど実態解明を進めるとみられる。
辻社長は、この工事を受注した準大手ゼネコン「東急建設」(東京都渋谷区) 側から約1000万円の謝礼を受け取っていたという。辻社長は、福島県の佐藤栄佐久知事の支援者で、 ゼネコン関係者らによると、県発注工事の業者選定に力を持つとみられている。
この談合疑惑は、法人税法違反(脱税)の罪に問われている中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市) に対する捜査の過程で浮上した。
他に競売入札妨害容疑で逮捕されたのは、佐藤工業社員の八巻恵一容疑者(47)。
調べによると、談合が行われていたのは、 福島県が発注した同県北部の阿武隈川流域の広域下水道整備工事。辻社長らは、 この入札前にゼネコン各社に東急建設東北支店から電話をかけるなどして談合した疑い。
関係者によると、大手ゼネコン「鹿島」(東京都港区)の社員も、 調整結果に関する連絡役を務めていたという。
特捜部の調べに対し、複数の社が談合の事実を認めているという。
この工事では、福島市など県北部の下水を県北浄化センターで処理することを目的に整備が開始され、 96年から一部の供用が始まった。その後、下水の流入量が増えたことから、阿武隈川右岸に新たな幹線(全長17. 3キロ)の建設が始まった。
このうち、福島市周辺の約1キロ分の工区の入札が04年8月に行われ、 東急建設と佐藤工業の共同企業体(JV)が7億7800万円で落札。落札率は94.6%だった。
この入札に絡み、東急建設の東北支店長(当時58)が、特捜部の調べに対し、辻社長に 「1000万円を渡した」と供述したとされる。同支店長は8月15日に都内のホテルから飛び降り自殺した。
辻社長は72年、同県郡山市内に設備会社を設立したが、 売り上げがほとんどないペーパー会社だったという。一方、建設業者側から公共工事の受注の口利きを頼まれ、 仕切り役を務めていたという。
特捜部の家宅捜索は、5日午前5時過ぎまで続き、 福島市天神町にある元県土木部長宅からは段ボール約30箱分の資料が運び出された。
2006年09月05日06時18分
福島県の公共工事で談合が行われていた疑惑にからみ、東京地検特捜部は4日夜、辻政雄容疑者(59) ら2人の逮捕に踏み切った。福島県知事の有力な支援者として知られる辻容疑者は、 大規模工事受注にどのようにかかわったのか。地方政治や建設業界に広がる黒い闇の解明に向けた捜査が始まった。
特捜部は急きょ係官を福島県内に派遣し、4日夜から関係先の捜索などを始めた。 談合に関する証拠隠滅が進んでいる恐れがあるという情報から、捜査予定を前倒ししたとみられている。
「知事の裏の秘書」。逮捕された設備会社社長、辻政雄容疑者は、地元業者の間でそう呼ばれていた。 佐藤栄佐久知事の実弟と親しいとされ、県側へ強い影響力を持つと見られていた。
一方、佐藤知事の現職秘書は、「かつて今まで、一度たりともうちの秘書だったことはない。 秘書みたいな役回りをしたこともない」と関係を否定。裏秘書が実像か虚像か、いまだに不明だ。
ただし、地元建設会社の関係者は、「仕切りだけでメシを食っている男」と評し、 受注調整に影響力があったという。
ある関係者は、辻社長の振る舞いが目に余ったため、県関係者に苦言を呈したことがあるという。だが、 その県関係者は「信頼して任せている。余計なことを言うな」と怒り出した。「県側のお墨付きがあった」。 関係者はそう振り返った。
一方、辻社長とともに逮捕された佐藤工業社員の八巻恵一容疑者(47)も、 談合の仕切り役として知られていた。
ゼネコン関係者は数年前、八巻社員から、「佐藤工業の業務(談合)担当を前任者から引き継ぎました」 とあいさつされたという。
特捜部は、水谷建設(三重県桑名市)の法人税法違反(脱税)事件の関係先として、 佐藤知事の実弟が経営する「郡山三東スーツ」を捜索。その捜査過程で、「談合の仕切り役」の一人として、 辻社長の存在が浮上した。
8月下旬、いつもは「何かあったら責任は取る」と強気な発言をしてきた辻社長が、 関係者にこう漏らしていたという。「おれは逮捕される。どうしたらいいのだろうか」
◇
辻政雄容疑者は逮捕前、朝日新聞の取材に応じ、容疑を強く否定していた。
――東急建設から1000万円もらったといううわさがありますが。
「カネなんかもらったことはない。私は東急の支店長には会ったことがない」
――支店長以外の人は知っていますか。
「副支店長は知っている」
――副支店長には何のために会ったのですか。
「知り合いに紹介された。東急建設には、かつていやな思いをしたことがあり、印象が大変悪かった。 ゼネコンはコネクションが欲しくてアプローチしてくるんだろうが」
――いつごろですか。
「水谷問題がマスコミに取り上げられた直後だから05年ごろか。 『こういう時期なんであまり会いたくはないでしょうが、会ってもらえないか』と言われたのを覚えている」
――地元の建設会社とはどんな話をするんですか。
「建設会社の大半は経営が厳しい。だから、リストラなど手を尽くし、同業他社と合併して、 経営を強化していかなくてはならない。談合なんかやっている時代じゃないって言ってきた」
――辻さんが建設会社のカネの運び屋になっていたという話がありますが。
「それは100%あり得ない。天地神明にかけてやってない。確かに建設会社はよく回っているが、 それは知事選に人手を出してもらうためだ」
――建設業界では佐藤栄佐久知事の「私設秘書」とのうわさもあります。
「佐藤知事とは同じJC(青年会議所)仲間だし、 JCの会頭選挙に佐藤さんが立候補して敗れたころから応援している。 一緒にシンガポールにゴルフをしに行ったこともある。でも知事就任後は、県庁に知事に会いに行ったこともない。まして、 秘書という名刺をつかったことは一度もないよ」
「確かに知事の弟とは親しいけれど、選挙の前に電話で市町村の議員をどう動かすか、 県議をどこにはりつけるかなど話し合うことはあっても、ふだん弟の家に行ったりはしない。 今年はガーデンパーティーで会っただけだ」