最近、世界遺産に登録された岩手県平泉町で、今年の秋に着工予定だった県道の電線地中化工事が延期になったそうです。
世界遺産の登録に際して、道路改修には遺産への影響調査を実施するよう勧告を受けたからだそうで、この影響評価を行い設計の見直しを行うために工事が遅れることになるようです。
電柱と電線の林は、ごく近代的・現代的な風景ですから、これを地中化すればすっきりとした道路景観になり、世界遺産の街に好い感じでマッチすると思いますが、登録の付帯条件で、好ましい景観づくりが足踏みするというのは、ちょっと皮肉な点ですね。
ただ、今回電線の地中化を行う道路区間には、地中にも遺構があると推測されているそうなので、地中の遺構までも保全する工法に変更されれば、影響調査を行うように、という勧告は意味があるものだとも言えますね。
「世界遺産」をベースにした観光や町おこしを進めるためには、早く電線の地中化をしたいところでしょうが、長い目で見れば、改めて影響調査を行ってじっくりと進んでいく方がよいのかもしれませんね。
YOMIURI ONLINE
世界遺産決まり電線地中化延期…平泉ジレンマ
岩手県平泉町で今秋、中尊寺とJR平泉駅を結ぶ県道(通称「中尊寺通り」、約1・4キロ)の電柱を撤去し、電線を地中に埋める工事が始まる予定だった。
世界遺産登録を目指した「平泉の文化遺産」にふさわしい景観づくりの一環だった。しかし、6月の登録時、道路改修には遺産への影響調査を実施するよう勧告を受け、工事が来年以降に延期される皮肉な結果となった。
中尊寺通りは俳聖松尾芭蕉も歩いたとされ、「平泉の顔」と呼ばれるメーンストリート。最近では空き家が目立つようになったため、地元住民らが2005年から、「世界遺産登録を受けるのにふさわしい町並みにしよう」と、県や町と共に、無料の「お休み処」を設置したり、車道を整備したりする取り組みを続けてきた。電線地中化は、そうした中で浮上した計画だった。
しかし、世界遺産委員会が6月、平泉の文化遺産を世界遺産に登録する決議をした際、日本への要請事項として、「主要な道路改修にあたり、個々の構成資産の周辺環境の見え方を含め、影響を計る『遺産影響評価』を行うこと」と勧告した。
中尊寺通りには、世界遺産登録された無量光院跡があるほか、地中にも遺構があると推測されている。このため、電線地中化工事を担当する県南広域振興局一関土木センターは、遺構を傷つけないようにするため、水道管に電線をはわせる工法の採用を検討するなど、根本的に設計を見直すことを決定。
7日に住民20人を集めた地元説明会を開き、電線地中化工事について「12年着工、15年度までに完成」と見通しを示したが、「新たな遺構が見つかる可能性もあり、流動的」と説明した。
同センターの本間崇志主任は「世界遺産登録された結果、工事が遅れるジレンマに陥ったが、手続きをしっかりと踏んで着工したい」と話している。(宇田川宗)