2011年08月31日

原子力発電は賠償しても低コスト?

 財団法人日本エネルギー経済研究所が、発電コストを試算した結果を発表したそうです。

 それによると、原子力は1kwhあたり7.2円で、火力発電は10.2円と3割ほど安く、 福島原発事故の賠償額を10兆円としても、日本の原発運転期間46年間に均してしまえば、 7.2+1.3=8.5円でなお低コストだそう。一方、地熱発電などのコストは8.9円とのこと。

 こういった試算をしていますが、その一方で福島原発の溶けた核燃料を回収開始するには技術的課題が多くあり、 将来の工程を明示できない状況にあるようです。スリーマイル島の事故では6年かかったそうで、 それ以上にかかることは間違いなさそうですね。

 

 燃料回収に向けて技術開発が必要となると、事故対策費でこれからどれぐらいの費用が必要になるのでしょう、 ちょっと想像がつきません。

 賠償以外の費用がさらに積み上がれば、また賠償額が膨らめば「低コスト」という一種の優位性は大きく揺らぎます。 さらに(起きて欲しくはありませんが)他に事故が起きれば・・・コストの上昇はとどまるところを知らなくなる可能性もあります。

 そして、莫大な費用を投じて事故処理が出来ても、今度は放射能で汚染された、 人が利用できない土地が出現するということにもなるでしょうが、発電コストにはその当たりの評価が織り込まれているのかどうか。

 

 試算結果の数字で原子力は8.5円、地熱は8.9円。 自然エネルギー発電は原子力とコスト的に同等で事故被害のリスクは小さい、と見るか、 いや賠償を考えてもこのように低コストであり、十全にコントロールすれば原子力が優位だ、と考えるのか。

 解釈の仕方により、使われ方が大きく変わってくる数字ではあります。総理大臣が変わって、 エネルギー政策に変化はあるのでしょうか。

 

YOMIURI ONLINE
賠償加算しても原子力は火力の3割安…エネ研

 経済産業省所管の財団法人・日本エネルギー経済研究所は31日、 原子力や火力などの発電コストを試算した結果を発表した。

 原子力は1キロ・ワット時あたり7・2円、火力は10・2円となり、原子力のコストが火力より3割安くなった。 電力10社と電力卸2社の有価証券報告書をもとに、2006〜10年度まで5年間平均の実績値を計算した。

 東京電力の福島第一原子力発電所事故による賠償額を10兆円と仮定し、 1965〜10年度の46年間の発電コストに上乗せすると、1キロ・ワット時あたり1・3円が加わり、計8・5円となる。 04年に経産省の総合資源エネルギー調査会が示した原子力の標準コストは5・3円だった。

 エネ研は「経産省の調査会の試算はモデルケースとして想定値をあてはめており、方法が異なる。 実際には建設資材費が上昇し、燃料再処理費などが多くなったとみられる」と説明する。

 一方、エネ研が試算した地熱など(太陽光や風力を一部含む)の発電コストは8・9円だった。

(2011年8月31日20時45分  読売新聞)

 

原子炉水没させ、溶けた燃料回収…10年必要か

 東京電力は31日、福島第一原子力発電所の廃炉作業の基本方針について、内閣府原子力委員会の 「中長期措置検討専門部会」に報告した。

 最終的には原子炉全体(圧力容器と格納容器)を水没させ、炉心から溶けて底部にたまった核燃料を回収する。 研究開発が求められる技術課題が多いため、実現時期は見通せず明示しなかった。

 東電は当初、原子炉を水没させて冷却する「冠水」を目指したが、原子炉、建屋の損傷が予想以上に激しく、 漏水の多さに断念した経緯がある。しかし、廃炉の成否を左右する核燃料の回収は、ロボットによる遠隔作業でも、 強い放射線を遮蔽する水中でなければ、達成は困難と判断した。

 ただ、実際に原子炉を水没させるには、高濃度に汚染された建屋を、作業員が入れる水準まで丁寧に除染した上で、 冷却水の注水を続けながら、同時に漏水部を補修するという難しい作業が求められる。 核燃料回収の開始に1979年の米スリーマイル島(TMI)原発事故では6年かかった。 今回は底部にたまった燃料の取り扱いが厄介なため、最低約10年は必要との見方も出ている。

(2011年8月31日21時12分  読売新聞)

 

 

posted by いさた at 22:38 | Comment(2) | TrackBack(0) | 環境問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
> 管理人様

こういう「計算」が出て来ますと、さも、数学的手続きが完了し、正しい結果が出ているように錯覚しますが、実際のところは、計算に加える要素を決める段階で、かなり恣意的な操作がされているようですので、信じられません。この辺、もうちょっと、出す方もちゃんと出して欲しいものです。
Posted by tenjin95 at 2011年09月01日 10:20
>tenjin95さん

コストを算出する過程ではさまざまな想定がなされているでしょうから、確かに出てきた数字がどれぐらい信頼できるか、という点は問題があると思います。
設定によって、さまざまに数字は変わると思います。

発電コスト、という数字がどのように意味づけされ意志決定の道具として使われていくのか、という方の問題が大きいと思います。

福島の事故前であれば、低コスト至上主義で話は通ったかもしれませんが、今やそのような状況にはありませんね。
Posted by いさた@管理人 at 2011年09月01日 11:50
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