2006年08月02日

ふじみ野市プール事故は人災

 埼玉県ふじみ野市のプール事故で、管理体制などが徐々に明らかになってきています。 自治体は国からの通達をまわしていない、自治体から委託された民間会社は下請に丸投げ、 下請けについてはまだ詳しくわからないが、少なくとも現場の管理はかなり適当、と他にもいろいろあるが、 書いてもどうしようもないぐらいに、管理体制がずさんだったことがわかってきました。

 個人的には、管理能力の無いところがいい加減な管理をするよりは、丸投げでも何でも、 まともに管理ができるところが実務をした方が、実際の管理運営としてはマシだと思いますが(無断で丸投げ、 といった契約上の問題や、税金の無駄遣いになるといったことはまた別問題)、ここは下請もいい加減だったようで、 救いがないですね。

 6枚の吸水口のふたのうち、ボルトで留められていたのはわずかに1枚しか無く、他は針金止めで、 しかもこれは今年に限ったことではなく、常態化しているような感じです。もしかして、これまで事故が無かったのが不思議、 といったような状態だったのでしょうか。

 プールの監督官庁として、文部科学省が監督しているようで、ふじみ野市なら教育委員会が監督部署のようですが、 ハードウェア的な管理としては、教育関連セクションでは役不足なのか? とふと思いましたね。例えば土木部とか、 実際にモノをつくるセクションなら、もう少し違った対応が出来たのでは?と思います。

 

 結論は急ぐべきではないのかもしれませんが、今回の痛ましい事故は、ずさんな管理体制のもとの人災、 と言ってもいいでしょう。正直、あきれています。
 日本中を見渡せば、ふじみ野市のケースは氷山の一角でしかないように思います。同様な事故が起きないことを望みます。

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埼玉県ふじみ野市プール事故

 

毎日インタラクティブ
クローズアップ2006:流水プール死亡事故 安全策、 現場任せ 国の指針生かされず

 ◇各省庁、改めて徹底

 夏休みを迎えたばかりの埼玉県ふじみ野市大井プールで起きた、小学生の死亡事故。 国は1日に安全性を徹底する通知などを自治体向けに出し、事故の「予見可能性」 を焦点に業務上過失致死容疑での捜査も始まった。一方、 各地のプールは子どもたちの歓声でにぎわっている。 子どもたちが事故に遭わないために何をすべきなのか。「プールサイドの安全策」を探った。 【酒井祥宏、村上尊一、 合田月美】

 国も今回の事故を受けて安全策などの再徹底を通知し始めた。

 文部科学省は75年から、毎年5〜6月、都道府県に(1)排水・吸水口のふたの確認(2) 固定されていない場合はボルトなどで固定するなどを文書で通知してきた。今年6月末の調査では、 安全対策が十分でない学校十数校が判明した。このため、 夏季の本格使用を前に対策を取るように指導したという。また、 1日には全市町村での安全点検を求める通知を出した。

 学校を除くプールの衛生管理を指導する厚生労働省は、 文科省の方針に沿う形で01年7月に事故防止策の指針をまとめ、自治体に通知していた。 文科省と同様に格子状の鉄ぶたや金網の設置、ねじやボルトでの固定を指針としてまとめた。 今回の事故を受けて1日、 01年に通知した事故防止策の指針を徹底するため、 各自治体に改めて通知した。

 ふじみ野市のプールは含まれないが、 全国に1856ある都市公園のプールの設備基準は国土交通省が所管している。 同省の通達を受け、 外郭団体 「日本公園緑地協会」は 「格子ぶたを二重に設置することや固定方法を工夫するなど安全面で配慮する」 との見解を示している。

 一方、国の通知には強制力はなく、現場で徹底されているかどうか、疑わしい状況もある。

 今回の事故の場合、 今年6月に埼玉県教委を通じてふじみ野市に送られたプール施設の安全管理に関する文科省の通知が、 プールを所管する同市教委体育課に届いていなかった。

 通知は同省スポーツ・青少年局長名(5月29日付)の「水泳等の事故防止について」。 夏のプール利用が始まる前に、 排水口のふたの設置状況の確認▽吸い込み防止金具は簡単に取り外しが出来ないようにすることなどを指示していた。 学校以外の施設も対象にした通知だったが、 受け取った市教委学校教育課は学校限りの書類と思い込み、 体育課にコピーを回付しなかった。

 ◇予見可能性が焦点、立件視野に捜査続く−−埼玉県警

 埼玉県警は1日、プール監視員らの立ち会いの下、所沢市立小手指小2年、戸丸瑛梨香 (えりか) ちゃん(7)が吸い込まれた流水プールの吸水口などを実況見分した。 県警は業務上過失致死容疑での関係者の立件も視野に入れている。ふじみ野市などの安全管理や現場の対応の不手際が、 事故が当然予測できるほどの重大なミスだったのかどうかという 「予見可能性」 の見極めも焦点になる。

 これまでの調べでは、 ▽事故直前に吸水口のステンレス製のふたが外れていると分かった後もすぐに遊泳をやめさせなかった▽ふたの固定に本来使うべきボルトではなく針金が用いられていた− −ことが分かっている。

 県警は今後、監視員や責任者らが現場でどのような対応を取ったかを詳しく捜査。 針金による固定も 「どの程度の強度が保てたか分からなければ直ちに過失とは言えない」とした上で、 固定方法や経緯などについて調べる方針だ。専門家の鑑定や実証実験も行うとみられる。

 また、県警幹部は予見可能性についても「ふたを外れたままにしたらどうなるか、 針金を使えばどういう事態を招くかを、現場スタッフや管理会社がどう認識していたのか詰めていく」 と話す。

 一方、元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授は、 「利用者をプール外に出してから起流ポンプを止めるなど、段階的に危険防止措置をとれば事故は防げた」と断言する。 針金の使用についても 「本来の構造と異なる代用品を使うのは安全管理上不適切で、刑事責任の対象になる」 と厳しい見方を示した。

 ◇利用者は事前に確認を−−流れ体感、人気の吸水口付近

 「あぶないプール」の著書があり、プールの安全性を追求しているエコライター、 有田一彦さん(50) は、プールサイドでの身の守り方について、「吸水・排水口の事前確認」と 「危険な飛び込み台の撤去」を挙げる。

 まず、「流れを体感できる吸水・排水口付近は利用者が特に近づきたがる場所で、 前もって吸水・ 排水口の安全を (利用者自身が)確認することが大切。 プール側も点検をした上で安全を宣言し、信頼を高めるべきだ」 と語る。さらに、飛び込み台については「子どもの体格が大きくなって飛び込み事故も頻発している。 水深が不足している台は撤去した方がいい」と話す。

 有田さんによると、 過去の吸い込み事故の裁判では吸い込む力は200キロの圧力と鑑定されたという。 「今回も力は相当強かったと推測される。 吸水口のふたがきちんとボルトなどで固定されていれば起きるはずのない事故。 気づいた時点でポンプを止めて告知すべきなのにそれもせず、構造や技術の問題というよりは人災」 と批判する。

 また「公営プールは行政か委託会社か責任の所在がはっきりしないことが多い」と指摘した。

 一方、安全が営業に直結する民間プール。安全対策には細心の注意を払っているという。 大型レジャープールの草分け的存在の「大磯ロングビーチ」(神奈川県大磯町)。 当初から排水口のふたは溶接で固定。 場内に約80人の監視員を配置し、「プールサイドを走らない」 「準備体操をする」 などの注意を頻繁に呼びかけているという。担当者は「事故後、 念のために再度しっかり点検した」と話した。

毎日新聞 2006年8月2日 東京朝刊

 

プール事故:「去年の針金交換」  ずさん管理常態化

 埼玉県ふじみ野市大井武蔵野の市営ふじみ野市大井プールで、同県所沢市立小手指小2年、戸丸瑛梨香 (えりか)ちゃん(7)が吸水口に吸い込まれて死亡した事故で、現場責任者(36)が県警捜査1課と東入間署の調べに 「6月の契約後、 吸水口のふたを固定していた(去年の)針金がさびていたので、取り換えた」 などと供述していることが分かった。県警は、 ボルトでふたを固定しないなどずさんな管理が常態化していた可能性があるとみて追及している。

 県警やふじみ野市によると、現場責任者は、プールの管理運営を請け負ったビルメンテナンス会社 「太陽管財」=さいたま市北区=から、市に無断で業務の丸投げを受けた「京明プランニング」=同市見沼区=の社員。 ふじみ野市と「太陽」 が委託契約を結んだ6月19日以降にプールを訪れて点検。「去年のもの(針金) から今年のものに、吸水口のふたの針金をすべて自分で交換した」と説明しているという。ただし、何カ所を固定したのか、 針金を交換した詳しい日時などは不明。

 また、県警の調べで、吸水口の60センチ四方のステンレス製ふた計6枚のうち、 四隅ともボルトで固定したものは1枚しかないことが分かった。

 流水プールは3カ所に吸水口があり、それぞれ左右に並んだ2枚のふたでふさがれていた。 事故のあった吸水口は左側のふたが外れ、右側のふただけが四隅をボルトで固定されていた。残り5枚は針金だけ、 または針金とボルトで固定され、何も留めていないボルトの穴だけの個所もあった。

 また、現場責任者は監視員に流水の仕組みなどを教えていなかったことが判明。 県警は監視員の教育実態も追及する。

【弘田恭子、小泉大士】

毎日新聞 2006年8月2日 15時00分

 

プール事故: 管理委託会社が監視員募集など下請けに丸投げ

 埼玉県ふじみ野市営プールで戸丸瑛梨香(えりか)ちゃん(7) が吸水口に吸い込まれ死亡した事故で、プールの管理を委託されていたビルメンテナンス会社「太陽管財」 =さいたま市北区=が、プールに社員を派遣せず、監視員の募集や教育も下請けに丸投げしていたことが明らかになった。 ふじみ野市との委託契約約款では、下請けへの再委託には市の承諾が必要だが、同社は市に申請していなかった。

 斉藤敏雄社長(37)の1日の会見などによると、92年に初めて同市とプールの業務委託契約を結び、 契約が取れた年は、さいたま市見沼区の業者に再委託し、03年以降は4年連続で再委託していた。太陽管財が作った 「安全管理マニュアル」を下請け業者が修正して使用。業者が派遣した現場責任者がマニュアルを持ち、 内容は口頭でプールの監視員に伝えていたという。

 事故は、針金だけで固定された吸水口のふたが外れて発生したが、斉藤社長は「さく(ふた) が外れる想定はしていなかった。今回のケースに関する緊急対応マニュアルはなかった」と話した。

 一方、ふじみ野市もこの日会見し、北村政夫助役は「再委託の届け出はなかった。 契約約款に明らかに違反しており、大変遺憾。至急調査したい」と述べた。

 同市によると、太陽管財はオープン前の7月5、7日に流水プールを安全点検。 A4判2枚の管理作業報告書を市に提出したが、清掃のほかは起流ポンプ点検だけで、特記事項はなかった。 池本敏男教育次長は「当然、ボルトなども点検しているはず。書いてないのは問題がなかったのだろう」と述べた。 【浅野翔太郎、小泉大士】

 ◇自治体職員の点検、毎日から2日に1度に減る

 また、旧上福岡市と旧大井町が合併してふじみ野市になった今シーズンから、 このプールの自治体職員による点検が、昨年までの毎日から、2日に1度に減っていたことが分かった。

 昨年10月の合併前は旧大井町の町民プールで、当時は町職員が毎日、 管理会社の現場責任者からの聞き取り、全体の見回りなどをしていたという。合併後は2日に1回になり、 事故前は7月29、30日が土、日曜だったため、直近の点検は同28日だった。ふじみ野市は点検が減った理由を 「合併で管理施設が倍増し、職員の手が回らなくなった」と説明している。

 プールには事故当時、現場責任者と看護師、監視員13人の計15人がいたが、 監視員はほとんど高校生のアルバイトだった。【山崎征克、小泉大士】

毎日新聞 2006年8月1日 21時37分 (最終更新時間 8月2日 1時28分)

 

posted by いさた at 15:45 | Comment(0) | TrackBack(8) | 時事(子供) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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