菅首相が、中部電力の浜岡原発の運転停止を要請したとのこと。法的な拘束力は無いそうですが、中部電力はこれを受けいれる方向のようです。
浜岡原発は静岡県にあり、近い将来に発生する確率が非常に高い東海地震の影響を大きく受ける可能性が高い。福島第一原発事故を教訓に、異例の要請に至ったようです。
様々な政治的思惑が絡んだ今回の要請のようですが、それでも一種の「英断」と言えるでしょう。良い方向なのか、悪い方向なのかはよくわかりませんが。
とりあえず運転を停止するのは、東海地震による被害を軽減するという点では良いのですが、運転停止だけで留まらず、原発に代わって電力供給をどうするのか、あるいは国民の皆さん電力消費は極力控えましょう、など、これからの方向性をエネルギー政策として打ち出していかないと十分とは言えませんね。
さしあたっては他の電力会社による供給や、火力発電など他の発電量を増強するしかないでしょうが、CO2排出云々ということもあり、代替発電手段が早急に必要でしょう。
浜岡原発は、数年かけて津波対策の強化等を行った後に運転再開する予定のようですが、まずはその強化の程度問題から議論しなければならない気がします。
原発の「絶対的な」安全性を確保、ということを検討していたら、運転再開までには相当な時間がかかると思われるので、それならば代替手段を探る方が現実的かもしれません。
あるいは、今年の夏が猛暑となり深刻な電力不足が起きれば、原発の災害時安全性はさておいて、社会的な要望によりすぐにでも運転再開を・・・となることも考えられます。
この要請単発で終わらずに、十分な現実性を持ったこれからのエネルギー政策の方向性がすみやかに示されれば、まさに「英断」になると思いますが、これからどうなるのでしょうか。そのあたりはまだ見えてきませんね。
YOMIURI ONLINE
浜岡原発、全面停止へ…首相が中部電力に要請
菅首相は6日夜、首相官邸で記者会見し、中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)のすべての原子炉の運転停止を、海江田経済産業相を通じて中部電力に要請したと発表した。
理由として、静岡県を中心とする東海地震の発生確率が高いとされる中、防波壁の設置など津波対策強化の必要性を指摘した上で、「国民の安全と安心を考えた。重大な事故が発生した場合の日本社会全体の甚大な影響もあわせて考慮した」と説明した。中部電力も首相の要請を受け入れる方向だ。
浜岡原発は、4、5号機が稼働中。点検のため運転を停止中の3号機は、東日本大震災の影響で運転再開を延期していた。1、2号機は運転を終了している。経済産業省原子力安全・保安院は6日、浜岡原発の防波壁など津波対策の実現には2〜3年かかるとの見通しを示した。
首相は、浜岡原発が東海地震の震源域内にあることを指摘した上で、「文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性は87%と極めて切迫している。防潮堤の設置など、中長期の対策を確実に実施することが必要だ」と強調した。中部電力への停止要請については「指示、命令という形は現在の法律制度では決まっていない。中電に理解してもらえるよう説得していきたい」と述べた。
(2011年5月7日01時42分 読売新聞)
中部電力は7日、菅首相による浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)のすべての原子炉の運転停止要請を受け入れる方向で最終調整に入った。
7日午後の臨時取締役会で、浜岡原発が全面停止しても電力需要を賄えるかどうかを見極めた上で受け入れを決定する見通しだ。
臨時取締役会で要請受け入れを決めれば、水野明久社長が名古屋市内で記者会見する方向だ。
中部電力は、「首相発言は法的根拠がないが、重く受け止めざるを得ず、要請を断ることは困難」(幹部)とし、要請を受諾する方向で調整を進めている。
浜岡原発は、4、5号機が稼働中で、3号機は定期検査で運転を停止している。すべての運転を止めると、電力の供給力は当初計画よりも約350万キロ・ワット減る。猛暑になれば夏の電力需給が逼迫(ひっぱく)する恐れもある。
(2011年5月7日14時33分 読売新聞)
菅首相が6日、中部電力浜岡原子力発電所の全面停止要請という異例の措置に踏み切ったのは、国民の原発に対する不安感を軽減し、東日本大震災対応の不備で失墜した政権の信頼回復につなげる狙いがある。
ただ、政府内で十分に検討された形跡はなく、支持率低迷に苦しむ政権が反転攻勢のために繰り出した苦肉の策との見方も出ている。
首相の指示で原発事故対応にあたっている細野豪志首相補佐官は6日夜、首相官邸で記者団に「首相は4月の初めあたりから浜岡原発を非常に意識していた。難しい判断だったが、国民の安全をないがしろにできない。相当、悩んだ上での判断だった」と述べ、停止要請が首相自身の強い意思だったことを明らかにした。
首相は数週間前から、政府関係者を通じ、浜岡原発を止めた場合に世論がどう反応するかを含め、具体的な影響をひそかに探ってきた。
(2011年5月7日08時07分 読売新聞)
賛否両論あるようですが、ただ、今の状況ですと、「とりあえず言ってみた」という行き当たりばったり的な状況にしか見えず、ますます不安を増大する気もします。一部の、反核主義者達は拍手喝采しているようですが、その喜色満面の様子もまた、何とも微妙です。
原発を止めるとして、その先の日本のエネルギー政策はどうする、というところが見えてこないので、「行き当たりばったり」感は否めませんね。
原発停止の動きだけが他にも波及するようになると、帰って先行きが不安になってきますね。