私は知りませんでしたが、熊本県と熊本市は公共工事の最低制限価格を決定するのに、コンピューターがランダムに決めるシステムを使っており、既に3〜4年ほど使っているそうです。
一応、ランダムに決めるので事前の最低制限価格の予想は不可能、ということだそうですが、現実には過去の実績からある程度価格が予想されて50〜70%の確率であたるとのこと。この予想をビジネスとする「予想屋」も存在するようです。
ある制限範囲内で最も安かったところが落札するという枠組み内では、最低制限価格の予想に力は入るのも無理からぬところがありますね。
最低制限価格を全くランダムに決めているわけでもなく、ある範囲内で乗率をかけて設定されているなら、予想も不可能では無いような気がします。運用年数が経過して、統計的分析からある程度予測ができるようになったとか。
熊本で採用しているシステムは、最低制限価格が発注者でさえ正確にわからないから、官民の癒着や談合が起きない、という発想なのでしょう。
しかしながらこの入札システムは、発注者として果たすべき責任(例えば業者の技術力の評価など)は、従来の入札法以上に、どこかに投げ出してしまっている感じを受けます。
YOMIURI ONLINE
予測不可能のはずが…入札システムに「予想屋」
公共工事の入札に絡み、役所と業者との癒着などを防ぐ切り札として、熊本県と熊本市が導入した最低制限価格をコンピューターで無作為に決めるシステムを巡り、建設業界が揺れている。
「コンピューターが決める価格を予測できる」という「予想屋」が登場し、特定業者の受注が目立つようになったからだ。県建設業協会(橋口光徳会長)は「本当に無作為な数字なのか」とシステムの性能に疑問を投げかけ、熊本市に公正な入札を要望、市は運用見直しを含めた検討に乗り出した。
財政難を背景に公共工事が減る中、非公開の最低制限価格を役所側から聞き出そうとしたり、制限価格ぎりぎりで応札したりする業者がいたことなどから、熊本市は2007年1月に、県は08年4月に、このシステムの運用を開始した。対象となる入札件数は県と熊本市で計4040件(09年度)に上る。
担当者が入札日に最低入札価格を入力すると、一定範囲内で無作為抽出された乗率を基に、最低制限価格が決まる仕組み。乗率の範囲は非公開のため、価格の予測は不可能とされている。だが、業界内では、「県は最低入札価格の上限1%内、熊本市は上下2%前後」とされ、各社が独自に積算して入札している。
ところが、県建設業協会によると、ここ数年、特定業者に受注が偏るケースが多くなったという。背景には予想屋の存在が指摘され、協会が、県や熊本市に運用の見直しなどを含めた対応を申し入れる事態になった。橋口会長は「最低制限価格の予想が商売になっている。技術力や実績を適正に評価する公正な入札制度の在り方を考えてほしい」と訴える。
県、市は「理論上、予測は不可能」との立場だが、市はシステムの算出ソフトを作ったメーカーや、統計学専攻の大学教授に調査を依頼し、「どのような対応が可能か検討する」としている。
◆「過去分析すれば、価格の予測可能」◆
「予想屋」の60歳代男性は読売新聞の取材に対し、「過去の入札結果を分析し傾向をつかめば、5〜7割程度の確率で価格を予測できる」と語った。
男性によると、入札直前の3日間に、その自治体で行われた別の入札をチェック。応札、落札価格などの公開情報を分析すれば、次の入札でどの程度の乗率が抽出されるか分かるという。
男性は、建設会社の経理・営業経験があり、「予測するのも企業の営業努力の一つだ。同じようにデータを分析している人はいる」と語り、複数の予想屋の存在を指摘した。
◆最低制限価格=入札で設定される落札価格の下限。公共工事で一定以上の質を確保するために設けられ、この価格を下回った業者は失格となる。多くの業者は、事前に公表される予定価格や発注内容などから積算している。
(2011年2月27日11時34分 読売新聞)