1月26日に、宮崎県と鹿児島県の境にある新燃岳(しんもえだけ)が噴火し、現在も活動が続いています。 およそ50年ぶりだそうです。
風向きの関係で宮崎県・鹿児島県側に火山灰が降灰し、飛行機の欠航や灰の除去に追われるなど、 影響が広がっているようです。まずは、被災されている地域の方々には、お見舞い申し上げます。
地震であれば、建物や土木構造物なら耐震対策を施したり、台風であれば水害に備えたり、地すべりや土石流であれば、 抑止工や砂防施設など、人間もある程度は事前にハードウェア的な対策を行うこともできます。
しかし、このような火山の噴火となると、あまり手の打ちようもなく、火砕流などの危険を予測して、 危険地域から避難するぐらいしか無いですね。噴火を予知・予測する技術の精度を高くすれば、 より確実に避難できるようになるかもしれません。
「天災」のなかでも、この火山の噴火は、自然の力の大きさが、ひときわ良くわかるものですね。
asahi.com
霧島・新燃岳が噴火 宮崎・鹿児島に降灰、空の欠航続く
2011年1月27日0時57分
気象庁は26日、宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(しんもえだけ)(1421メートル)で小規模な噴火があり、 噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた、と発表した。 2007年12月に新燃岳に噴火警戒レベルを導入後、レベル3は初めて。
発表によると、26日午後3時半に小規模な噴火があり、噴煙の高さが火口縁から約2千メートルに達した。 同日朝もごく小規模な噴火があり、火山活動が活発になっていた。宮崎県の6市町と鹿児島県の3市で降灰が確認された。
新燃岳東麓にある宮崎県高原町は26日、日高光浩町長を本部長とする町災害対策本部を設置した。
噴煙の影響で、宮崎空港発着のJAL、ANAの計6便が欠航。 JALは27日の同空港発羽田行きと伊丹行きの始発計2便の欠航も決めた。
宮崎道は26日午後5時半から高原―田野インター間で通行止め。また、宮崎県都城市のJR日豊線・ 山之口駅では同日午後5時10分ごろ、信号機が降灰の影響で動かなくなり、JR九州は同線の一部区間と日南線、 吉都線の全線の運転を見合わせた。27日午前1時現在、復旧のめどは立っていない。
2011年1月27日23時0分
新燃岳の噴火による大量の灰は上空を覆う噴煙と一体化し、天地の境が消え、中心市街地のビル群は白くかすんだ。 硫黄臭は消えない。都城市の全域が灰白色に沈んだ。
27日の未明から明け方にかけて、建物のガラス戸がガタガタと音を立て続けた。風のせいではなく、空振と後で知った。 夜になっても、軽い衝撃や揺れが時折届いてくる。
霧島連山に向かう県道御池都城線を北上すると、所によって灰は4〜5センチも積もり、 車が通るたびに白いほこりがわっと舞い立つ。積み重なった灰で路面は波打ってしまい、センターラインは見えない。 車はライトを点灯させ、速度を落として行き交った。
市北部の夏尾町一帯は、田も畑も樹木も民家も灰に埋もれていた。「もう、どうにもならん」「雪と違って大変」。 家の屋根やビニールハウスなどに積もった灰の除去作業に追われる市民は徒労感を深くしていた。
霧島連山に近づくにつれて路上には火山れきが目立つようになり、車の底をカンカンと鳴らした。
県道から国道223号(霧島バードライン)で高原町に入ると、様相は一変した。霧島の山容が迫り、 青い空に噴煙が黒々と染みをどんどん広げていた。
降灰はない。代わりに、新燃岳の火口から高々と噴き上がる黒い噴煙が頭上に広がる。 両手を大きく広げてぐいぐいと迫ってくるようで、まがまがしさを覚える。新燃岳が吐き続ける黒煙は高空に達した後、 長い帯になって都城市のある南東の方角に流れていく。
新燃岳を眼前にする高原町には、都城市とは別の恐怖感と圧迫感が漂った。(知覧哲郎)
2011年1月29日11時1分
噴火活動を続ける宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(しんもえだけ、1421メートル)の地下に、噴火前、 東京ドーム約6杯分のマグマが蓄積していたと、国土地理院が28日、発表した。
新燃岳周辺では2009年12月ごろから、全地球測位システム(GPS) による観測点間の距離が伸びる現象が観測され始めた。山が膨張していることを示すデータで、 26日の噴火までに大きい地点では約4センチ伸びていた。
地理院は10年5月以降の変動量をもとに、膨張の原因と考えられるマグマの上昇量を分析。 噴火前までに火口の西北西約10キロ、深さ約6キロに約600万立方メートル(東京ドーム約5杯分)、 火口の直下約3キロに約100万立方メートル(同約0.8杯分)のマグマがそれぞれ蓄積されていたと推定した。
山の膨張は噴火直後から止まり、現在は収縮する傾向にあるという。防災科学技術研究所も傾斜計での観測から、 西北西のマグマだまりが噴火で縮んだとの見方を示した。
04年の浅間山(長野・群馬県境)の噴火の際には約1千万立方メートルのマグマが蓄積されていた。また、 噴火を続けている桜島(鹿児島県)では、 05年からこれまでに約3千万立方メートルのマグマが地下から供給され続けているという。
一方、産業技術総合研究所は軽石を分析し、今回噴出したマグマの成分は過去の噴火と同様との見解を示した。(中村浩彦)