自然再生法という法律は知りませんでしたが、その法に基づいて、河川改修で直線化した河川を再度曲げ戻し、 蛇行状態を復元することになったそうです。対象は北海道は釧路川で、河川改修後、 釧路湿原が消失していっていることに対する対策ということです。
引用記事からは、詳しい計画内容が不明ですが、湿原を回復しよう、そのためには川の流れを元通りにしよう、 という意気は良し、ただし、その具体的手法については議論や検討が必要だと思います。
自然の回復は何十年、何百年というスパンで見ないと成果が見えてこないでしょうし、河川の蛇行を復元する、
ということだけでは対策としては不十分だと思われます。旧河川の川幅を広げて・・・という下りがありますが、
川幅を広げると氾濫が少なく、湿原の回復効果はあまり期待できないかもしれません。
自然の回復、復元という事に関しては、人間の建設技術はまだまだ未熟であるし、自然に関しては謎である部分が多い、
と思っています。
河川を曲げ戻すのは良いとしても、よく氾濫を起すような、本来の旧河道を復元できるのか、 というのはちょっと疑問ですね。河川構造令に従えば、蛇行はするけれども、 洪水を抑制するために要所要所でコンクリートなり石積なりの護岸ができるはずだと思うのですが・・・・
asahi.com
川の蛇行復活、釧路川の曲げ戻しには十億円の高い代償
2006年05月01日10時02分
北海道の釧路湿原を流れる釧路川で、洪水を防ぐためにまっすぐにした川を、元の蛇行した状態に 「曲げ戻す」作業が今夏にも始まる。自然再生法に基づく河川の曲げ戻しとしては国内初の本格事業だが、 計画に参加した地元の非営利組織(NPO)が「公共事業の看板の付け替えに過ぎない」 と反対を表明する事態になっている。
釧路川は屈斜路(くっしゃろ)湖に発し、ラムサール条約登録湿地・釧路湿原を南へ下り太平洋に注ぐ。 直線化のため氾濫(はんらん)が減ったうえ、上流からの土砂流入が増えたことで、湿原は乾燥が進み、 この半世紀で2割の面積が消失した。このため国土交通省は、標茶(しべちゃ)町茅沼地区で、 25年前にいったん直線化した約1.6キロを埋め、2.7キロの蛇行した川を復活させる。
工事では今の河川を埋め戻し、そばに残る旧河川の川幅をブルドーザーで広げて、本流とつなぐ。 事業費として約10億円を見込む。洪水を防ぐため80年まで続けた、約5キロの直線化事業(5億円)の倍だ。
この計画は、地域住民やNPO、流域の自治体、国交省、環境省などが参加する 「釧路湿原自然再生協議会」に国交省が提案。昨年10月の議事録には「一同同意」と書かれている。
しかし、協議会のメンバーで、湿原の土地を購入し保護するNPO「トラストサルン釧路」は今年1月、 反対を表明。国交省には「議論が不十分」とする意見書を出した。杉沢拓男事務局長は「多数決などの議決はなく、 いつの間にか了承されていたのが実態。われわれ民間は軽視されている」と話す。
トラストサルンは、川岸の土盛りを取り除くことなどで自然に蛇行化できるとみて「今の自然を考慮し、 最低限の工事にとどめるべきだ」と訴える。これに対し、国交省は「シミュレーションでは、 1000年たっても蛇行しない」と結論づけた。
関東平野を流れる荒川・旧河川の蛇行復元も、 釧路川と同じく自然再生推進法に基づく全国18カ所の再生事業の一つだ。
埼玉県の「荒川太郎右衛門地区」の約4キロは70年ほど前に直線化された。 周囲に旧河川が池として残るが、湿地の乾燥が進む。
再生協議会は04年3月、極力工事せずに今の環境を保全することを決めた。その後、 国交省の治水計画の見直しもあり、方針を転換し、蛇行を復活させる方向で検討している。
旧河川跡の三つの池を工事で一つにつなげる。さらに本流から水を引き込み、蛇行した流れを復活させる。 直線部分はそのまま残し、蛇行部分と周囲の湿地は遊水地の役目を果たすという。数十億円規模になりそうだ。 協議会の会長を務める浅枝隆・埼玉大大学院教授は「都市部でもあり、自然と治水の両立が必要。 協議会内では蛇行化を歓迎している」と話す。
同法のモデルとされ、茨城県・霞ケ浦の湖を水質汚濁から再生させた「アサザプロジェクト」は、 水草を植える市民運動から始まった。「アサザ基金」の飯島博代表は「失われた自然は簡単には戻らない。 縦割り行政では箱庭的な自然になりかねない。官民がもう一度、協議会のあり方を考える時だ」と話す。