多剤耐性菌について、先日インド・パキスタン付近由来と思われる菌の出現がニュースになっていましたが、 アメリカでは同じように多剤耐性を持つ新型の病原性大腸菌が広がっているそうです。
強力な耐性ではなく、まだ有効な抗生物質もあるそうなので、今のところはそれほど恐れる必要も無いようですが、 この菌がさらに変異してさらなる耐性遺伝子を獲得すると治療がほとんど不能となるらしいので、注意すべき存在ではあるようです。
日本でも似たタイプの大腸菌が西日本に広まっているとのことなので、身近な脅威になりつつあるようです。要注意。
もう一つは、北米で感染例があり、死者も出ている強毒性カビの感染症が、日本国内で初めて確認されたとのこと。 患者は40代男性で、脳にコブができていたそうです。幸いにも回復されたそうですが、服薬などで1年かかったそうです。
感染経路が特定されていないようですが、輸入木材からの吸入、あるいは国内でカビが定着しているなど、 いずれにしても国内で感染した可能性が高いようです。
人から人への感染は無いそうなので、爆発的流行とはならないでしょうが、国内にカビが定着していたら、 これから患者が増加していくのかもしれません。
抗生物質の多用から生まれてきた耐性菌、そして北米からやってきた毒性のカビ。人間の活動によって発生・ 拡大しているという点で、ひとつの「人災」といえる問題ですね。
(関連記事)
多剤耐性菌感染が欧米で急増
asahi.com
抗生物質効きにくい病原性大腸菌 米で確認、日本でも
2010年8月19日11時18分
【ワシントン=勝田敏彦】抗生物質で治療しにくい新型の多剤耐性の病原性大腸菌が米国で広がっていることが、 ミネソタ州の退役軍人医療センターなどの研究でわかった。ST131と呼ばれる型で、 従来の耐性大腸菌に比べて病原性が比較的高く、感染すると重症になりやすい。日本でも見つかり、西日本などで拡大中という。
米感染症学会の専門誌に今月、掲載された論文によると、2007年、米国で抗生物質が効かない大腸菌の流行があった。 研究チームが入院患者127人から採取した大腸菌を調べたところ、うち54人がST131だった。
耐性がある大腸菌は病原性が低いものが多く、病原性の高い大腸菌は抗生物質による治療が可能だったが、 ST131は病原性が比較的高いうえに耐性もある。
カルバペネムなど切り札となる薬への耐性はみられていないが、チームのジェームズ・ジョンソン博士は 「この菌がもう一つ耐性遺伝子を獲得すると、ほとんど治療不能。大変、憂慮される」と警告している。
ST131は米国以外の数カ国で見つかっている。九州大病院の内田勇二郎助教によると、 耐性がやや異なるST131が西日本を中心に拡大中という。
大腸菌の多くは無害だが、まれに重い感染症を引き起こすものもある。ST131は、激しい下痢を引き起こしたりするO (オー)157とは異なる型だが、食中毒を起こすこともある。必要以上に恐れることはないが、 尿管感染が悪化した敗血症などで患者が死亡する場合もある。
抗生物質の乱用などによる耐性菌の発生は世界的な問題になっており、世界保健機関(WHO) は来年4月の世界保健デーのテーマを「薬剤耐性」にする予定。また最近、インド由来とみられ、 抗生物質がほとんど効かない耐性遺伝子NDM1を持つ菌も見つかっている。
2010年8月24日11時38分
北米で集団発生が問題となり健康な人でも死亡することがある強毒カビに、 東京都内の40代男性が感染していたことが分かった。「クリプトコッカス・ガッティ」という真菌で国内初の感染例だ。 男性に北米への渡航歴はなく、国立感染症研究所は他に患者がいないか実態把握に乗り出す。
東京大チームが突き止めた。男性は健康に問題はなかったが、頭痛やものが見えにくくなり2007年に都内の病院を受診。 検査で脳に直径5センチほどのこぶが見つかり手術で取り出して調べた結果、このカビを検出した。 点滴や飲み薬で1年後に快復した。
感染者から体外にカビが出ることはなく人から人へは感染しない。 植物に付着し何かの拍子で舞い上がったカビを吸い込んで感染する。このカビは、1999年にカナダ・ バンクーバー島で人の感染が集団で起こり、その後、北米大陸に広がり最近は米西海岸の複数の地域で報告されている。 男性で見つかったカビの遺伝子は、カナダのものと同じだった。
米疾病対策センター(CDC)によると、7月までに米西海岸側で60人の患者報告があり、 経過を確認できた45人のうち2割の9人が亡くなった。免疫力の落ちた患者だけでなく、健康な人も含まれていたという。
東大病院の畠山修司感染症内科副科長は「北米から輸入された木材についたカビを吸い込んだかもしれないが、 既に国内の植物にカビが定着している可能性もある」とみる。カビの潜伏期間は平均6〜7カ月。男性が最後に渡航したのは、 受診時から8年前のサイパンで、そこからの感染は考えにくいという。
国立感染症研究所の宮崎義継・生物活性物質部長によると、早く発見すれば治療できるが、病院で見落とす恐れがある。 「1年以内に北米に行った経験があれば診断時に医師に伝えてほしい」という。(熊井洋美)
従来、医学というのは、あらゆる症例に対処できるという信仰の元に発展を続けてきたのでしょうが、それが文字通りの「神話」になる日も近いような気がします。こうなると、むしろ、我々自身の「覚悟の決め方」が問われるようになると思いますね。ガンなどは、まだまだ「覚悟」の要る病気ですけどね。
「不治の病」を克服するべく医学が発展してきたと思いますが、やはり治らない病気はあります。
ただ、人間の所業により「不治の病」が生み出される、というところに一種の罪悪感が芽生えているのかもしれません。
「覚悟の決め方」、自分自身に対してはそう悩まない気がしますが、例えば家族に対してはどうか、となると難しいものがありますね。