引用したasahi.comの高校教科書に関する記事について、私の仕事の状況に照らしあわせて感じたこと。私が生徒や学生だった頃は、 教科書の内容を理解するべく、本人が努力するのがスタンダードでしたが、これからは教科書側が学ぶ側にあわせて、 歩み寄って来てくれるようです。時代の変化を感じます。
引用記事中、『自由に考えなさいと言っても、分らない生徒がいる。本文に答えがあるから、探して埋める作業をさせ、
参加したと感じてもらえればいい』というくだりがありますが、「自分で考える」
ということのトレーニングを放棄させているようにも読めます。
今の生徒は低学力と高学力に二極化していて、低学力の方はこれでいい、という感じがしますが、
これでは二極化を促進しているだけではないでしょうか?
私が学生の時の教授の話で、「高校までは与えられた知識を覚え、言われたことをしていればよいが、大学生であれば、 自分で考えて問いを立てる”学問”をしていかねばならない」ということが未だ記憶に残っていますが、「自分で考える」 ということは、大学生のみならず大人として生きるためにも非常に重要です。 このトレーニングを放棄していったいどうなるのでしょう。
さて、これがなぜ私の仕事(土木設計)に関係があるのかというと、現在の仕事の状況がこれに似ているからです。
昨今の発注者(場合によっては元請さんも)は、設計の内容が理解できないため、
報告書や図面をわかりやすくしてくれ、ということで、昔の成果品と比べると、素人にもわかりやすいものになってきています。
「わかりやすい」という事自体は、悪いことではないのですが、成果品を受取る側は、もっとわかりやすく、
という要求だけがエスカレートし、自分自身で考えようとしない、考えようとしないのでますます理解できなくなっていく・・・
、という一種の悪循環が発生しています。
「技術職」が名ばかりになりつつある、と言う感じでしょうか。業界で言うところのレベルの低下、というのは、
この状況の一環ではないかと思います。
私のような下請は、要求に抗えるはずもなく、リクエストに応えるため、いろいろと工夫をしたり、調べたりするので、 かえって勉強になったりするのですが・・・・自分自身の元のレベルが高くはないので、 なかなかつらいこともあります(^^;
「名ばかりの技術職」はビジネスでのことなので、本人の自覚・意欲の問題である、と言えますが、 設計業界でもそのうち二極化の状況になるのかもしれません。
asahi.com
高校教科書、来春から至れり尽くせり
2006年03月30日06時20分
ノートを取ろうとしない生徒には、書き込み式教科書を。教科書を開くことをしない場合は、 漫画を載せて注意を引いてみる。来春から使われる高校教科書に、勉強嫌いの生徒を意識した教科書が登場する。 進学校向けには、その学年を超えた学習内容が盛り込まれる教科書も少なくない。「学力の二極化は、もう止まらない」 との声が教科書会社から出ている。
「書き込み式」を出したのは、桐原書店で、これまでは上・中級レベルの国語教科書を出していた。 従来よりも大きいB5判サイズ。本文のすぐ下が書き込み用になっている。
「文脈を追う」というテーマでは、劇作家如月小春さんの「輝きを見つめて」 というエッセーを載せている。書き込み部分には「□に本文中の語句を入れ、本文の内容をまとめてみよう」という質問。 続いて、「私はお年寄りの話を聞くのが□□なのだ」というくだりがあり、「好き」などの語を本文から探して、 埋めていく。
別のテーマでも、宮本輝さんの小説「途中下車」の下に、「□に適当な語句を入れ、『私』 と友人の行動と心理を読み取ろう」という質問があり、「私たちの心をさんざん□□□」などに「乱した」などと入れる。
「自由に考えなさいと言っても、分からない生徒がいる。本文に答えがあるから、 探して埋める作業をさせ、『参加した』と感じてもらえればいい。先生の負担も軽減できれば」と、 同社編集局国語部の廣井尚子副編集長は説明する。
編集と監修には、教育困難校に勤める現役の高校教師ら7人があたった。 同社の編集者らも困難校を延べ50校ほど回った。
授業中、携帯電話でメールを打ったり、化粧をしたり、教師の話を聞かない。 何度も練習したはずの漢字がテストで書けない。答案用紙には、『単位ちょうだい』と書き込みがしてある。
「生徒がノートを取らないなら、教科書をノート代わりにしたらどうか」という意見が編集会議で出た。 穴埋め式は問題集にもなる。教科書1冊で完結させようというアイデアだった。
「書き込みスペース」を新設したのは、三省堂もだ。
評論文や小説の後に「学びの道しるべ」と題し、「空欄を本文中の語句で補おう」と書き込む形にした。 哲学者、佐藤信夫さんの評論「コインは円形か」の後には、「わたしたちは、ふだんコインを□□と見なしている」に、 「丸い」などを入れていく。
国語教科書編集部の高橋正積編集長は「以前は中間レベルに向けて教科書を作ればよかったが、今は、 上と下のふたこぶになっている」と説明する。
◇進学校向き、高レベル版
数学では難易度の格差が広がる。啓林館の数学Iの教科書にはこんな趣旨の記述がある。 「箱代が200円。1個100円の菓子を2000円以内で何個まで詰められるか(答えは18個以内)」
この問いで不等式の意味を理解させるなど中身を簡単にしたほか、方程式と不等式を漫画で説明したり、 会話形式で解き方を示したりする。「苦手な子も開いてくれる教科書にしたかった」と編集者は言う。
一方、「今回は、教科書のレベルを上げるための改訂だ」 と話すのは数学Iと同Aでシェア1位の数研出版。出した6点中4点は、いずれも進学校中心の教科書で、 大学入試でよく問われる応用的な問いを増やした。その中には、 絶対値記号を含む方程式など従来は参考書レベルにしか掲載されていないものもある。
「私立の生き残り競争に中高一貫校や公立も加わり、難しい教科書が望まれる状況がある。 現状に物足りない学校が納得できるものを」
◇ニート対策、求人票指南
「求人票は会社選びの第一歩。重要な情報が満載です」。来春、高校生が使う社会科の教科書に、 ニート対策の一環として見開き2ページで詳細に高卒用求人票を説明した記述が登場した。「有給休暇」や「基本給」 という用語を説明し、応募するときの注意点も詳しく紹介した。
帝国書院の「高校生の新現代社会」。基本給については「1か月の給料」、有給休暇については 「給料を減らされないでとれる休暇。労働基準法で、入社後6か月から年に10日以上保障されている」と詳しい。
求人票の見方の項目では、「賃金」を「実際に受け取る給料は、手取額。この欄を確認することが重要」 と説明している。