様々なトラブルに見舞われ、一時は地球への帰還が絶望視された探査機「はやぶさ」。危機を乗り越えて、 昨夜地球に帰還しました。
本体は大気圏突入で燃え尽きましたが、カプセルがオーストラリアの砂漠に着地、 近く回収されて日本に戻ることになるそうです。
ここまでこぎ着けられたのは、ハードウェアに対する日本の技術力と、 何よりも帰還を諦めずに努力の運用を続けたJAXAのスタッフの力によるものですね。心から称賛します(^^)
故障が続いたのは失敗ではありますが、ここまでリカバリーしたことは貴重な経験となり、 新たな技術の蓄積となったはずです。充分、世界に誇れるプロジェクトだと思います。
着地したカプセルは慎重に開封され、調査が行われるそうです。小惑星イトカワの砂などを持ち帰っていれば、 世界初の快挙となります。9月頃までにはわかるそうですが、ぜひぜひ、快挙を果たして欲しいと思います。
YOMIURI ONLINE
奇跡生んだ粘りと技術…「はやぶさ」帰還
満身創痍(そうい)になりながらも、三つの危機を乗り越え、地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。
月より遠い天体に着陸して戻るという快挙を可能にしたのは、一人旅を続ける「同志」 を励まし続けた研究者の粘りと日本の技術だった。
◆通信途絶
はやぶさを待ちかまえていた最初の危機は2005年11月、小惑星イトカワ離陸後に起きた。地上管制室で歓声がわく中、 姿勢制御用の化学エンジンがまさかの燃料漏れ。その反動で姿勢が乱れ、通信も途絶。はやぶさは行方不明になった。
探査機にとって「姿勢」は生命線だ。太陽電池パネルに日光が当たらないと、電力不足に陥る。 アンテナが地球に向かなければ、交信できない。
管制室が雑音の中から、はやぶさの微弱な信号をとらえたのは7週間後。回転していたはやぶさのアンテナが、 たまたま地球へ向いた時だった。「意地と忍耐と神頼みの日々だった」と、宇宙航空研究開発機構の川口淳一郎教授(54)。 しかし、交信は20秒つながると、次の30秒は途切れる状態。そこで、20秒に収まるよう小刻みに指示を出し続けた。
◆化学エンジン全滅
二つ目の危機は、イトカワ離陸後の燃料漏れで、 推進力の強い化学エンジン12基が05年12月までにすべて故障したことだ。長距離航行用のイオンエンジンで代用した。 馬力の弱いイオンエンジンは姿勢制御には向かないが、推進剤のガスを加熱せず直接噴射するという奇策で瞬発力を得た。
1平方メートル当たり1ミリ・グラムに満たないという太陽光の圧力さえも利用した。 風を受ける帆のように太陽電池パネルで光圧を受け、機体を安定させた。「地上から指令した以上の働きをしてくれた」。 はやぶさは川口教授らにとって、もはや探査機以上の存在になっていた。
しかし当初予定した帰還軌道に乗り損ね、3年間の遅れが生じた。その分、部品劣化も進んだ。通信途絶時、 ヒーターの切れた機体は零下50度まで冷え切った。復路は寿命との闘いだった。
◆「イオン」も故障
そんな懸念がついに現実となる。09年11月、4基中3基目のイオンエンジンが故障したのだ。 三つ目の危機に帰還は絶望視された。
そんな時、国中均・同機構教授(50)が提案した。
「故障個所の違う2基をつなぎ合わせて、1基分にしてみよう」
研究者の用心深さで、2基をつなぐ予備回路を仕込んでいたのだ。しかし、試験はしていない。 予期せぬ副作用の恐れもある賭けだったが、成功した。
◆イオンエンジン、日本の力証明
航行に不可欠な装置がほぼ全滅した状態でも帰還できたのは、 NECが作ったイオンエンジンが八面六臂(はちめんろっぴ)の活躍をしたお陰だ。
キセノンという物質にプラスの電気を帯びさせ、これを電気の力で加速し、高速噴射するイオンエンジン。 化学エンジンが高圧ガスを噴射するのに比べ、地上で1円玉を持ち上げる程度の力しかない。それでも、 空気抵抗がない宇宙空間で長時間稼働すれば、加速する力を得られる。
イオンエンジンの利点は、何と言っても効率の良さ。化学エンジンは、 噴射に必要なエネルギー源を燃料という形ですべて地上から持って行かねばならない。 イオンエンジンは太陽電池パネルで電力が得られるため、 キセノンの積載重量は化学エンジンの燃料の10分の1で同じ推進力を出せる。
イオンエンジンは過去にも探査機に使われたことがあるが、トラブル続きで、はやぶさには日本の独自技術が採用された。 キセノンに電気を帯びさせる際、電子レンジでおなじみのマイクロ波を使う。耐久性がぐんと向上し、 7年間でのべ4万時間稼働した。
NECは、世界初の事業化に向けて米企業と提携し、来年度から3年間で20億円の受注を見込む。 イオンエンジンは小型衛星の長期運用に使う「電気推進エンジン」市場で新顔となるが、「はやぶさで圧倒的な実績を示せたことで、 世界最大の米国市場で占有率6割以上を狙える」と、NEC宇宙事業開発戦略室の堀内康男さん(45)。同社は今後、 はやぶさに搭載したものより推進力を20%増すなど、品質をさらに高める方針だ。(科学部 本間雅江、江村泰山)
(2010年6月14日08時45分 読売新聞)
【ウーメラ(オーストラリア南部)=本間雅江】宇宙航空研究開発機構は13日深夜、小惑星探査機「はやぶさ」 の耐熱カプセルがウーメラ付近の砂漠に着陸したのを確認した。
カプセルには、小惑星「イトカワ」の砂などが入っている可能性があり、空輸されて18日にも日本へ到着する予定だ。
カプセルは日本時間13日午後11時7分ごろ、着陸した。同夜、研究者が豪空軍のヘリに乗り、 上空からカプセルを確認した。断熱材が既に外れ、直径30センチほどの大きさになっている。
着地点が先住民アボリジニの聖地のため、カプセルを運び出す許可を先住民から得たうえで、研究者らが14日午後、 回収に向かう。
空輸後、神奈川県相模原市の宇宙機構の専用施設で、約2週間かけて慎重に開封される。砂が入っているかどうかは、 9月ごろまでに分かりそうだという。
(2010年6月14日11時38分 読売新聞)