アメリカに行っている鳩山首相ですが、国連で演説し、温室効果ガス25%削減という「鳩山イニシアティブ」を表明したとのこと。
一応、先進国のひとつである日本が達成不可能とも言える厳しい目標を掲げることで、温室効果ガス削減に消極的な途上国や巨大な排出元である中国やインドなど高度成長中の国に、削減意欲を促す、と言った効果が一部では期待されているようです。
まあ、意気込みとしてはいいんでしょうが、達成はどうするの?という目標。鳩山首相が割と具体的に言及したのは、国内排出量取引制度や再生可能エネルギーの固定価格買取制度、地球温暖化対策税といった内容。
例えば温室効果ガス排出を減らす新技術の開発とか、植林や都市の緑化を進めるといった話ならまだわかりますが、その辺に言及しないのはなぜでしょう。緑化など、温室効果ガス削減以外に、ヒートアイランドの抑制効果や生態系への好影響など、他の効果も望めると思うのですが。
排出を抑制する手段として、温暖化対策税やエネルギーの固定価格買取というのはまだマシな方だと思いますが、下の下なのは排出量取引でしょう。しかも、これを政府が切り札に考えているらしいので、うんざりしてきますね。
結局、目標達成するために、海外の排出枠買い集めに腐心して終わり、というオチのような気がしてなりません。資金は、国債なり税金から調達することになるのでしょうか。
こんなことをしても、中世にあった「免罪符」を買い集めているのと同じで、結局は何の解決にもなっていないと思うのですが、違うんですかね。
排出量取引のマネーゲームで儲けている人達にとっては、鳩山イニシアティブは、とてもありがたい話なのかも知れませんね。
YOMIURI ONLINE
「温室ガス25%削減」首相、国連演説で表明
鳩山首相は21日夜(日本時間22日午前)、就任後初の外国訪問先となる米国・ニューヨークに到着した。
首相は同日夜、市内のホテルでさっそく中国の胡錦濤国家主席と会談を行った。一夜明けた22日午前(同22日夜)には、100か国以上の首脳らが集まる国連気候変動首脳級会合の開会式で演説し、「鳩山外交」が始動した。
【ニューヨーク=宮井寿光、吉形祐司】鳩山首相は22日午前(日本時間22日深夜)、国連本部で開かれた国連気候変動首脳級会合の開会式で演説し、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減する新たな日本の中期目標を表明した。
目標達成のため、二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課税する地球温暖化対策税の創設を検討する考えも示した。
英語で演説した首相は、「我が国のみが高い削減目標を掲げても、気候変動を止めることはできない。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、わが国の国際社会への約束の前提となる」とも述べ、米国や中国などすべての主要排出国が意欲的な削減目標を示すよう促した。
90年比25%削減は、麻生前政権が6月に発表した「05年比15%削減」(90年比8%削減)を大きく上回り、事実上の日本の新たな国際公約となる。
首相は、日本の中期目標について、「あらゆる政策を総動員して実現を目指す」と決意を示した。具体的な政策として、〈1〉大企業に削減義務を課す国内排出量取引制度の導入〈2〉再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の導入〈3〉地球温暖化対策税の検討――を挙げた。
途上国支援については、「我が国は、これまでと同等以上の資金的、技術的な支援を行う用意がある」と積極的支援を行うことを表明した。支援にあたって〈1〉先進国は、官民の相当の資金で貢献する〈2〉途上国が資金援助を受けた場合、援助が削減にどれだけ役立ったか検証可能な仕組みを作る――などの原則を「鳩山イニシアチブ」として提唱した。
首脳級会合ではオバマ米大統領も演説し、「地球を危険に陥れることなく経済を成長させるため、我々全員がともに取り組まねばならない」と、世界のすべての国に行動を呼びかけた。12月にデンマークのコペンハーゲンで開かれる気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を「重要な一歩」とするよう訴えた。 また、中国の胡錦濤国家主席は、自国の2020年までの取り組みとして〈1〉再生可能エネルギーと原子力の活用で、非化石燃料が1次エネルギー消費に占める割合を15%まで高める〈2〉森林面積を05年に比べ4000万ヘクタール増やす――などと具体的な目標を明らかにした。
(2009年9月22日23時49分 読売新聞)
鳩山首相が予定する国連気候変動首脳級会合での演説の全文は次の通り。
潘基文(パンギムン)国連事務総長、各国代表の皆様、ご列席の皆様、本日の時宜を得た国連気候変動首脳級会合でスピーチをする機会を頂き、誠にうれしく思います。私は、先月末の衆議院選挙において初めて民意による政権交代を果たし、つい6日前に内閣総理大臣に就任を致しました鳩山由紀夫です。気候変動の問題は、その影響が世界全体にわたり、長期間の国際的な取り組みを必要とするものです。すべての国々が「共通だが差異ある責任」のもと対処していくことが肝要です。政権交代を受け、日本の総理として、本日ご列席の各国のリーダーの皆様とともに、科学の警告を真剣に受け止め、世界の、そして未来の気候変動に結束して対処していきたいと存じます。
まず、温室効果ガスの削減目標について申し上げます。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)における議論を踏まえ、先進国は、率先して排出削減に努める必要があると考えています。我が国も長期の削減目標を定めることに積極的にコミット(関与)していくべきであると考えています。また、中期目標についても、温暖化を止めるために科学が要請する水準に基づくものとして、1990年比で言えば2020年までに25%削減を目指します。これは、我々が選挙時のマニフェストに掲げた政権公約であり、政治の意思として国内排出量取引制度や、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入、地球温暖化対策税の検討をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現を目指していく決意です。
しかしながら、もちろん、我が国のみが高い削減目標を掲げても、気候変動を止めることはできません。世界のすべての主要国による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築が不可欠です。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が国の国際社会への約束の「前提」となります。なお、先ほど触れた国内排出量取引市場については、各国で検討されている制度についての情報交換を進め、特に国際競争力への影響や各国間のリンケージを念頭に置きながら、議論を行って参りたいと考えています。
次に気候変動の問題は地球規模の対応が必須であることから、途上国も、持続可能な発展と貧困の撲滅を目指す過程で「共通だが差異のある責任」の下、温室効果ガスの削減に努める必要があります。とりわけ温室効果ガスを多く排出している主要な途上諸国においては、その必要が大きいと思います。
また気候変動問題の解決のために、とりわけ脆弱(ぜいじゃく)な途上国や島嶼(とうしょ)国の適応対策のために、大変大きな額の資金が必要とされており、それを戦略的に増やしていかなければなりません。我が国は、国際交渉の進展状況を注視しながら、これまでと同等以上の資金的、技術的な支援を行う用意があります。
公的資金による途上国への資金や技術の移転は重要不可欠です。ただし、それだけでは途上国の資金需要を満たすことはできません。効果的に公的資金が使われる仕組み作りと同時に、公的資金が民間投資の呼び水となる仕組み作りについての検討を各国首脳と進めていきたいと考えています。
途上国への支援について、以下のような原則が必要であると考えています。第1に、我が国を含む先進国が相当の新規で追加的な官民の資金で貢献することが必要です。第2に、途上国の排出削減について、とりわけ支援資金により実現される分について、測定可能、報告可能、検証可能な形での国際的な認識を得るためのルール作りが求められます。第3に、途上国への資金支援については、予測可能な形の革新的なメカニズムの検討が必要です。そして資金の使途の透明性及び実効性を確保しつつ、国連の気候変動に関する枠組みの監督下で、世界中にあるバイやマルチの資金についてのワンストップの情報提供やマッチングを促進する国際システムを設けるべきです。第4に、低炭素な技術の移転を促進するための方途について、知的財産権の保護と両立する枠組みを作ることを提唱します。
私は以上を「鳩山イニシアチブ」として国際社会に問うていきたいと考えております。京都議定書は、温室効果ガスの削減義務を課した最初の国際的な枠組みとして歴史的なマイルストーン(里程標)でした。しかしこれに続く新たな枠組みが構築されなければ、効果的な取り組みとなりません。そのための公平かつ実効性のある新たなひとつの約束作成に向け、今後このイニシアチブを具体化する中で、コペンハーゲンの成功のために尽力したいと考えています。
本日ご出席のオバマ大統領が提唱されているグリーン・ニューディール構想にも現れているように、気候変動問題への積極的な取り組みは、電気自動車、太陽光発電を含むクリーン・エネルギー技術など世界経済の新たなフロンティアと新規の雇用を提供します。世界の中で相対的に高い技術開発のポテンシャル(潜在能力)と資金力を持っている我が国が、自ら率先して削減目標を掲げ、革新的技術を生み出しつつ、その削減を実現していくことこそが、国際社会の中で求められている役割だと認識しています。我が国の国民、企業の能力の高さを私は信頼しています。国民も企業も、そして私たち政治においても、産業革命以来続いてきた社会構造を転換し、持続可能な社会を作るということこそが、次の世代に対する責務であると考えています。
最後に12月のCOP15(気候変動枠組み条約第15回締約国会議)において、まだ見ぬ未来の子どもたちのために我々世界の政治指導者が大きな決断をしたと言われるような成果が上がるよう、共に協力することを皆様に強くお願いしたいと思います。ご静聴ありがとうございました。
(2009年9月22日23時51分 読売新聞)
鳩山首相が国連で表明した温室効果ガスの「25%削減目標」達成に向け、政府が切り札として期待するのが排出量取引の活用だ。
国が主な企業ごとに排出枠の上限を割り当て、過不足分を企業同士が売買する仕組みの導入や、政府による海外からの排出枠購入などが検討されている。ただ、企業への排出枠の強制的な割り当てには産業界が反発するとみられ、本格活用には課題も多い。
◆制度の仕組み◆
鳩山内閣の閣僚は、削減目標を達成するために、排出量取引を活用する考えを相次いで表明している。
小沢環境相は18日の記者会見で、早ければ11年度にも国内で、本格的な排出量取引制度を始めたい考えを表明した。直嶋経済産業相も17日、国内の努力で足りない分は、海外から排出枠を購入するなどして対応する意向を示した。
小沢環境相が導入の方針を示す制度は「キャップ・アンド・トレード」方式と呼ばれる。排出量を枠内に抑え切れなかった企業は、排出枠を下回った企業から余った枠を取引市場を通じて買い取る仕組みだ。排出量が多い企業は、枠を買うための費用を抑えようと省エネに励み、排出量の少ない企業も枠を売って稼ごうと、やはり省エネに取り組むと期待できるという。
制度の先駆けは欧州連合(EU)だ。05年に導入し、08年の取引額は約8・4兆円と世界全体の約7割を占める。米国や豪州なども導入を検討中だ。日本にも制度導入で本格的に取引市場が整備されれば、海外企業からの排出枠購入がしやすくなると見込まれている。
ただ、「キャップ・アンド・トレード」方式には、産業界の異論が根強い。国内では08年10月から取引制度が試行され、累計で700社以上が参加しているが、制度への参加は任意で、排出枠も企業が自由に設定できる。目標を達成出来なかった場合もEUのような罰則はない。
膨大なコスト負担を強いられるとして、EU型の制度導入に産業界が強く反対したためで、新政権との調整も難航が予想される。
◆課題も山積◆
政府レベルの海外からの排出枠購入も、思い通りに進むかどうかは不透明だ。
日本は多くの先進国に排出削減(08〜12年)を義務付けた「京都議定書」を達成するため、すでに海外からの排出枠購入に頼っている。政府は今年3月、ウクライナとチェコから、排出枠を購入すると発表した。それぞれ数百億円かかったとみられる。
だが、貴重な売り手だった東欧諸国も、国際的な争奪戦で排出枠の余りが少なくなっている。日本の意欲的な排出削減目標で、取引価格が急上昇するとの見方もある。
日本が京都議定書の義務を達成するためには、排出枠の購入などに政府と民間を合わせ5年間で総額3500億円〜1・7兆円が必要になるとの試算もあり、今後、負担はさらに重くなる。日本から膨大な国富が流出するとの懸念も強い。
産業界には「企業の国際競争力が低下する恐れがあり、国が海外から排出枠を購入して企業の負担を抑えても、負担は国民の税金に回る」との声がある。排出量取引を活用する場合も、政府には日本が担う削減義務の意義や達成までの道筋について、十分な説明が求められる。(伊藤剛)
(2009年9月22日23時58分 読売新聞)
90年比ということは、当時はバブル真っ盛りなのでということもありますし、
今までの温室効果ガス低減の議論はEU主導だったのを、
政治的に日本主導へ転換するための発言ではとも思ったりします。
私も排出権取引のマネーゲームで儲けている一人ではありますが、
むしろそんな机上計算より、スマートグリッドの推進などの、
エネルギー政策の大転換がなされれば効果はかなりのものではと…。
まねーゲームではない大きなビジネスチャンスが目の前にとわくわくしています。
「イニシアティブ」の言葉通り、日本主導を狙っての目標ブチ上げですが、実現へのハードルが高すぎるのではないかと。
>むしろそんな机上計算より、...
政府は、そんな机上計算を切り札として考えているようなので、期待が出来ないのです。
いくら排出量取引をしたところで、地球全体の排出量の枠の中で日本の割合を取り出して、数字あわせをしているに過ぎません。
今後、言われるようなエネルギー供給や利用技術の開発を推進するといった方向になるのなら、また違ってくるのですが。
毎年3兆円の税金を投入して、高速道路を無料にしてレジヤーで高速道路を利用する人を優遇する。
利用増による渋滞によって、排ガスが増加するだけでなく、運送会社や高速バス会社は予定の時間通りに走れず事業が成り立たないので、無料化に反対している。渋滞はマイナスの経済効果となる。
自家用車の利用増及び走行距離の増加によって、排ガスが増加して地球温暖化および健康被害を加速させる。
本来、モーダルシフトによって、自家用車から公共交通機関へ移行させて、ガソリン使用量及び二酸化炭素の排出量を減らして省エネルギー及び温暖化対策とするべきであるが、その逆を推進しようとしている。
新聞社による全国の知事へのアンケート調査では、高速無料化を評価した知事は岩手、徳島、沖縄のわずか3知事だけ。
(注)排ガスに含まれる有害物質は、煤塵、窒素酸化物、硫黄酸化物、炭化水素、二酸化炭素など。
無料化には税金の投入が必要であり、税金も含めると高い買物となる。
商圏が拡大すると自動車の走行距離が長くなり、排ガスの排出量が増え健康被害および地球温暖化が加速する。
なお、イオン(株)社長の岡田元也は、民主党の岡田勝也の兄である。
中国あたりは何せ人口が多いので、一人当たりが少なくても全体の量にすれば相当なものです。
中国に限らず、CO2削減は経済発展を阻害する要因としてとらえられている面もあるので、他国が追随するかどうかは言われるようにわかりませんね。
ただただ「25%」という数字のみが独り歩きして行くのかもしれません。