2009年09月03日

ミツバチの集団失踪はウィルスが原因か

 数年前より、アメリカを皮切りにヨーロッパやアジアなどで、ミツバチが大量に失踪し、蜂蜜がとれないばかりか植物の受粉が進まず、他の農作物の出来にも影響が出ている、という現象が発生しています。

 報道され始めた頃は「謎の失踪」だったのですが、実はCCD(蜂群崩壊症候群)と病気のため、ということになっているようです。そして、この病気の原因はあるウィルスの大量増殖によるものである、という研究結果が発表されたとのこと。

 

 突然変異したウィルスの増殖によって、ミツバチ体内でタンパク質を合成しているリボゾームという細胞器官が破壊され、それがもとで体調不良となるようです。

 これがやがて失踪につながるみたいですが、元記事ではその辺の過程が明らかではありません。 

 

 ミツバチが農作物を受粉させる働きを担っていることを考えると、人間の食糧問題にもつながっています。虫の病気とはいえ、放ってはおけないということですね。

 

 最近、集団失踪は減少傾向にあるそうですが、原因が解明されてきたことで、より効率的な失踪対策が立てられるようになるのでしょう。

 この機会に、リスクをある程度ヘッジする別の方策も用意しておいた方が良いでしょうが、ミツバチほどの働きを代替するのは非常に難しいかも知れませんね。

 

産経ニュース
ミツバチ大失踪はウイルス 米大学が原因究明

2009.9.3 15:04

 ミツバチが大量に失踪(しっそう)する謎の病気CCD(蜂群崩壊症候群)は、ミツバチのタンパク質合成機能を「乗っ取る」ウイルスの大量増殖によって引き起こされている可能性がある−3日までに発表されたある研究で、こんな結論が出された。

 米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された同研究によると、CCDが観察されたミツバチの細胞内では、「タンパク質工場」として機能する細胞器官、リボソームが粉々になっていた。イスラエル急性まひウイルス(IAPV)や羽変形病ウイルス(DWV)といったウイルスがリボソームの異常を引き起こし、ミツバチの病気・ストレス耐性を低下させている可能性があるという。

 米イリノイ大学の昆虫学者で同研究の共著者であるメイ・ベレンバウム氏はインタビューで、研究によってウイルスの大量繁殖がコロニー崩壊の引き金となっていることが示唆されたと説明。

 「ミツバチのタンパク質合成能力は病気や栄養不足を回避し、体内の有害物質を排除する上で中心的な役割を担っており、今回の研究で示された筋書きには非常に説得力がある」と語った。

 同研究の資金援助を行った米農務省によると、ミツバチは植物の受粉によって年間150億ドル規模の経済効果をもたらしている。ミツバチの大量失踪は2006年に初めて発生。その後少なくとも米国35の州、欧州、アジアで発生が報告され、ウイルス、ダニ、殺虫剤、成育環境などが原因だと考えられてきた。

その後養蜂(ようほう)家がミツバチの健康状態をより厳重に監視するようになったことで、CCDの発生件数は減少傾向にある。米農務省の統計によると08年9〜09年4月までのCCD発生率は約29%と、07〜08年の32%、08〜09年の36%から減速している。

 研究の共著者で米農務省所属研究者のジェイ・エヴァンズ氏は、養蜂業界でCCDが慢性化するにつれ年間損失は売り上げの約3割に上り、06年以前の病気・環境ストレス被害のおよそ倍にふくれあがる可能性があるという。

 研究では米国東・西海岸双方の、健全なコロニーとCCDが起きたコロニーそれぞれからミツバチを採取し、その全ゲノム(遺伝子情報)を解析。ベレンバウム氏はCCDとリボソーム異常の関連性が解明できれば、CCDの早期診断に向けた今後の研究の方向性が定まると話す。

 一方、米ペンシルベニア州立大学の研究者、デニス・ヴァンエンゲルスドロップ氏は、なぜCCDは06年に突然発生したのかという疑問は残されていると指摘。「体内のウイルス量が高いということは判明しているが、突然変化した要因が何かは不明なままだ」と語った。

(ブルームバーグ Alan Bjerga)

 

posted by いさた at 23:42 | Comment(2) | TrackBack(0) | 思い事(なるほど) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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この記事へのコメント
> 管理人様

謎、謎、と農業の現場では、パニックになりつつあったと聞いていますが、これで多少は解明されると良いですね。余談ですが、昨年ウチの寺の庭にミツバチのとんでもない集団が来訪したことがあり、いわゆる巣が移ってきたということらしいのですが、その後、結局定着せずに終わりました・・・人の往来がある場所でしたから。でも、あの集団は驚きました。何千匹(万?)といましたね。
Posted by tenjin95 at 2009年09月04日 06:28
>tenjin95さん

ウィルスが原因として、失踪を予防する有効な方策が開発されるかどうかでしょうね。


>昨年ウチの寺の庭にミツバチの...

市街地だと、ミツバチ、特に巣なんてものは見かけることがありませんが、自然豊かなところではそのようなこともあるのですね。

何千匹単位のミツバチの集団はこれまで見たことが無いので、見れるものなら見てみたいという気はあります。
Posted by いさた@管理人 at 2009年09月04日 09:45
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