千葉県の有名な九十九里浜は、海岸の浸食により砂浜が消失していっているそうです。離岸堤などの人工構造物で対策してきたものの、あまり効果が見られないため、今回は9年かけて20万m3の砂を撒き、定着させる計画だとのこと。
既に他県でも行われていて、成果も出ている方法だそうで、九十九里浜でも効果が期待されているようです。
砂浜は海岸の浸食や河川からの流下などによって供給される砂が、潮流や地形の条件によって堆積した場所で、砂の供給と流出のバランスの上になりたっています。九十九里浜周辺では流出量が供給量を上回ってしまったために砂浜が後退しているということですね。
供給が減った原因は、供給源となっていた海岸の浸食を止めるために消波堤を設置したから、と読売の記事には書かれていますが、その他にもダムができて河川からの供給量が減ったりしたことなども関連しているのでしょう。
要するに、人為的なものに由来するということです。
人間の技術で自然のバランスを崩すのは簡単でも、元に戻すのは難しい。
自分達のしたことの悪い結果に対し、また自分達で対策するというのは必要ではありますが、対策の動機が、海水浴場として衰退してしまったから、というのでは、結局どこまで行っても自分達の都合ですか?という印象。
後は、漁業的問題が出ているとかでしょうか。いずれも、関係者の方々が生きていく上で重要なことはわかっています。
人の手が加わらなくても、非常に長い期間で見れば砂浜も成長と衰退があり、生態系もそれにあわせて変化するでしょうから、現状の砂浜の保全が絶対に必要とは思いませんが、ただ、もう少し別の理由は無いのですか?と思ってしまいます。
ちなみに、九十九里浜は約60kmで、日本で2番目に長い砂浜だそうです。では1番長いのは、調べてみたところでは、静岡県の遠州灘海岸で約115km。2倍ほどの開きがありますね。
YOMIURI ONLINE
浸食・九十九里浜、大量の砂まきで再生へ
海岸浸食によって砂浜が消失している九十九里浜を再生するため、千葉県は今年9月にも被害が深刻な一宮海水浴場(千葉県一宮町)の沖合に大量の砂をまいて定着させる人工養浜に乗り出す。
これまでは人工の構造物を海中や砂浜につくって砂の流出を防止してきたが、決め手にはならなかった。この方法は茨城、神奈川県などでも採用され、効果を上げており、地元関係者は期待している。
県などによると、1948年から2002年までの約50年間で、海岸浸食によって後退した九十九里浜は、一宮海岸(一宮町)、横芝海岸(横芝光町)周辺などで最大約100メートルに達し、他の海岸でも数十メートルにのぼるという。
九十九里浜は、北端の屏風ヶ浦(銚子・旭市)と南端の太東崎(いすみ市)が波で削られ、その土砂が海岸に堆積(たいせき)して形成されてきたが、北・南端部の浸食により付近の田畑などが崩落し始めた。
防止対策として、県が60年代から消波堤を設置するなどして効果が出たものの、今度は砂浜の後退が始まった。消波堤の設置後、両地点からの沿岸への砂の供給量は年間44万立方メートルから14万立方メートルに減少した。
これを受け、県は砂浜の消失が目立ってきた80年代から、海中に一定間隔でコンクリートの消波ブロックを設置する「離岸堤」などの対策をとってきたが、食い止めることはできなかった。閉鎖に追い込まれる海水浴場も出ている。
県の人工養浜事業は9年がかりで約20万立方メートルの砂をまいて定着させる計画。今年度は海水浴シーズン後、一宮町の一宮海水浴場の沖合約100〜300メートルに、約2万立方メートルの砂をまく予定。この砂は太東崎の消波堤付近に堆積したもので、来年度以降は片貝漁港付近の砂などを使用することも検討している。
この方法は、茨城県の神向寺海岸や神奈川県の茅ヶ崎中海岸などで採用されている。陸地や海底の砂をまき、両海岸では、砂が完全に流出してしまっていた地点に数十メートルの砂浜が復活するなどの効果を上げている。
千葉県は「一宮海水浴場で成果が上がれば、他の海岸浸食が進行している場所でも地元の漁協などと相談し、検討したい」としている。
県やいすみ市など6市町村の首長などで構成する南九十九里浜養浜計画策定会議会長の宇多高明・日大理工学部客員教授は、「海岸の砂の絶対量を増やすのが狙い。人工構造物に頼った対策では、砂の堆積に偏りが生じ、砂浜の回復には限界がある」と指摘している。
◆九十九里浜◆
房総半島東部、約60キロに及ぶ日本で2番目に長い砂浜。日本の白砂青松100選と日本の渚100選に選定されている。沿岸自治体は旭市、九十九里町、白子町など。
(2009年7月3日07時16分 読売新聞)