震度計を作っているメーカーが、事業が不採算だとして撤退するため、 十分に保守点検されていない震度計が増えているようです。
2005年に震度計の製造販売や保守点検を止めた沖電気製品の場合、 全国の自治体が設置する約2800台の震度計のうち、およそ400台と15%程度を占めているそうですが、これらのうち、 適切に震度を測定できなくなっているものもあるようです。
昨年7月の岩手県の地震で、最大震度「6強」を記録した震度計は、台座が地面から浮き上がっており、 正しく観測できない状態になっていたとのこと。
自治体による保守点検といっても、不具合に気づかないままだったりと、期待できる内容では無さそうです。これから、 適切に計測できない震度計が増えて、さらにそれに気づかないというケースが増加していけば、 地震後の防災対策やあるいは地震予知の研究などにも影響が出てくる可能性があります。
もしかすると、土木構造物で重要な部分を占める耐震設計に関しても、何らかの影響が及ぶかも知れません。
一種の社会インフラに当たると思いますが、きめ細やか・かつ正確な地震観測網の基礎がゆらいできています。
不具合のある震度計を調査し、更新するのもまたコストがかかることで、現在の自治体の財政状況において、 どんどん進めていくのは難しそうですね。
即効性のあるうまい解決策は無さそうに思えますが、逆に考えると、 少ない観測値からいかに有効な地震情報を得て対策をするか、という技術を進歩させる契機なのかも知れません。
asahi.com
放置の震度計400カ所に メーカー撤退、計測に支障も
2009年7月2日15時0分
全国400カ所に設置されている震度計のメーカーが、不採算を理由に事業から完全撤退することを決め、 一部の震度計は保守点検が不十分で震度を正確に測れない状態で放置されていることが、朝日新聞の調べで分かった。 昨年7月の岩手県沿岸北部地震で、最大震度が取り消された岩手県洋野町の震度計も、このメーカーの製品だった。 設置した8県は別メーカーの製品に取り換えるなどの対策に乗り出した。
全国の自治体が設置する震度計は約2800台ある。今回の震度計は大手通信機器メーカーの沖電気工業(本社・東京) の製品。岩手、山形、山梨、富山、岐阜、島根、鳥取、佐賀の8県が約400台設置している。同社によると、 「需要が少なく採算が取れない」として05年、震度計の製造や販売を中止。「今後は点検や修理、部品の交換はしない」 とする通知を、8県の知事あてに出した。契約が切れた震度計は保守点検をしていないという。
岩手県沿岸北部地震で、発生時に「最大震度6強」を記録しながら、その後に取り消された岩手県洋野町の震度計も、 05年の点検が最後だった。この震度計は、設置した台座部分が地面から浮き上がり、 揺れを正しく観測することができない状態だったことが分かっている。
しかし、沖電気から通知を受けた岩手県は、同社が点検をしなくなってからも現地の点検をしなかった。 電話回線を使った遠隔点検はしていたが、震度計の設置状況までは把握できず、 悪条件で放置されていることに気づかなかったという。
岩手県は「県としての点検は4年に1回だった」と説明している。
同社製を42台設置する山形県では昨年6月、白鷹町の震度計が壊れ、沖電気に修理を依頼したが、 修復するまで4カ月かかった。その間、震度の観測は中止した。県は「『修理のための部品がなく、代替機もない』と説明された」 という。
64台を設置する山梨県は、沖電気から今年度以降は保守点検の年間契約が結べないと通告された。 「部品がなければ修理ができないこともある」とも伝えられた。
更新を決めた佐賀を除く7県は、いずれも「故障しても修理できないなら、別のメーカーに替えるしかない」と、 早期の更新を検討している。(神崎卓征、大久保泰)
気象庁による一括設置、一括管理、というわけではないんですね。早く、他社製品への変更を期待したいですね。
現在のような経済状況で、震度計にお金を投入するというのはなかなか難しいように思えます。
他社製品に変更したとしても、その会社もまた、事業から撤退するかもしれません。
難しいところだと思います。
>NTTや電力会社...
言われるように、地震観測と言うことで、相互の協力体制ができれば、色々なメリットがありそうですね。
費用負担割合が問題になると言えば問題になりそうですが。