先日、イブ・サンローラン氏の遺品がオークションにかけられ、その中に清朝からの略奪品とされるネズミとウサギの頭部像が含まれており、中国政府が競売中止や返還を求めたものの、競売が行われるという出来事がありました。
落札額は日本円にして約39億。で、実は落札者は中国人で、海外に流出した文化財を取り戻す活動をしている活動家だったそうです。
この活動家は、落札額の支払いを拒否しているとのこと。中国人として当然のことをしたまでだ、と主張しているそうです。しかし、それでは問題の頭部像は引き渡されないと思いますが、どうなるんでしょうね。
外国に奪われた自国の文化財を取り戻したい、という気持ちは、まあ理解できます。奪ったような奴に金を払いたくない、という気持ちも、それなりにわかります。
ですが、やっぱり「落札したけど金は払わん、物はよこせ」で共感を呼べるのは、中国国内だけだろうと思います。感情的にはどうあれ、競売というシステムに乗ってしまった以上、落札して買い戻す、というのが成熟した方法でしょうね。
日本も、確か仏像か何かが競売にかかった時(盗品だったか?)、落札して買い戻していた記憶があります。
現実的に、欧米諸国が過去に世界各地から奪ってきたモノはいくらでもあるのだから、「金は払わん」となったら、像の引き渡しは絶対に認めないと思いますが。もし引き渡しに応じれば、困った前例を作ることになってしまいます。
可能性があるとしたら、政治介入しか無いのでは。
産経ニュース
支払い拒否の中国人の言い分「中国人としての責任を果たしただけ」
2009.3.2 18:26パリのグラン・パレで、故イブ・サンローラン氏の遺産として競売に出品されるブロンズ製のウサギの頭部像(右)とネズミの頭部像=21日(AP) パリのグラン・パレで、故イブ・サンローラン氏の遺産として競売に出品されるブロンズ製のウサギの頭部像(右)とネズミの頭部像=21日(AP)
【北京=野口東秀】第2次アヘン戦争のさなか、中国清朝の離宮「円明園」から英仏連合軍に略奪され、このほどパリで競売にかけられたウサギとネズミのブロンズ像の落札者が中国人だったことが2日、明らかになった。国営新華社通信が伝えた。落札した民間組織顧問は「金を払うつもりはない。中国人としての責任を果たしただけだ」と話しており、像の引き渡しをめぐって新たな問題が起きる可能性が高い。
新華社によると、落札したのは流出文化財を取り戻す活動をしている民間組織「海外流出文化財救出基金」の顧問を名乗る蔡銘超氏。
像をめぐっては、中国外務省が「中国に所有権があるのは間違いない」と返還を要求。在仏中国人弁護士らによる競売差し止め請求をパリ大審裁判所(地裁)が棄却したことから、中国国内ではインターネットなどで仏製品不買を呼びかけるなどの過激な主張が飛び交う一方、蔡氏の行為は愛国心と団結心を鼓舞する事例と受け止められている。過去にはサル、ウシなどの像を中国系企業が落札で中国に戻し、愛国行為としてたたえられたことがある。
国家文物局も国民世論を背景に「一切の責任は(競売を行った)クリスティーズ社が負わなければならない。中国人民の文化的権益、民族感情を著しく傷つけた」と非難する声明を出している。ただ、仏政府批判は避けており、中仏関係に影響を与えたくないとの姿勢が見える。
2009.2.22 00:55
21日、パリの美術館で公開された略奪品のブロンズ製のネズミとウサギの頭部像(ロイター) 21日、パリの美術館で公開された略奪品のブロンズ製のネズミとウサギの頭部像(ロイター)
英仏連合軍が1860年に第二次アヘン戦争に伴う北京侵攻で清朝の離宮、円明園から略奪したブロンズ製のネズミとウサギの頭部像が競売を前に、パリの美術館グラン・パレで21日、公開された。
2つの頭部像は25日に競売にかけられる予定で、中国側は競売中止や返還を求めている。
AP通信によると、ネズミの像は高さ約30センチ、ウサギの像は高さ約45センチ。落札価格は最高でそれぞれ約1300万ドル(約12億円)に達するとみられている。(共同)
払う気が最初からなかったのであれば、いくらでも値段を釣り上げられますね。でも、こういうルール違反をして取り戻そうとしたところで、反発を受けるだけでしょう。ご指摘のように国内だけで通用する論理かと思います。
戦乱続きの世の中に残っていること自体が奇跡ですから。
金は払わん、ではモノは戻ってこないですし、それでは落札した目的を達することもできない。
中国国内向けパフォーマンスで終り、という事になってしまいますね。
あまりごねるようだと、言われるように競売出入り禁止にされるだけですね。
>戦乱続きの世の中に残っていること自体が奇跡ですから。
およそ150年前に持出された物のようですから、競売に出てきたのが幸運なことだったのかも知れませんね。