作家の村上春樹さんが、イスラエル最高の文学賞であるエルサレム賞を受賞。エルサレムで開催された授賞式に臨み、 記念講演を行ったとのこと。
私は村上春樹さんには「ノルウェイの森」で触れ、その後、作品を読み漁っておりました。過去形なのは、 最近は読まなくなってしまった、ということですが、好きな作家であることにはかわりありません。
さて、記念講演では、「壁」と「卵」を使った比喩で、イスラエルのガザ攻撃への批判を行うと共に、 「私は常に卵の側に立つ」ということで自分自身の意思表明も行われ、単に政治的・ 思想的な立場のみによる批判的発言とはならなかったようです。
言わば、「作家としての」批判・意思表明ということで、うまく表現をされたということでしょうね。流石です。
エルサレム賞の受賞については、賞を辞退しろ、といった圧力がかかったりもしたようですが、結局、授賞式へ出席し、 メッセージを伝えることを選ばれたわけです。
結果的に、「作家」として、単に辞退する事に比べれば、はるかに意味のある行動をされたのではないでしょうか。
47News
村上氏、イスラエル授賞式で講演 「制度が組織的に人を殺す」
【エルサレム16日共同=長谷川健司】作家の村上春樹さん(60)が15日夜、イスラエルの文学賞 「エルサレム賞」の授賞式で記念講演し、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ攻撃に言及した上で 「わたしたちを守るはずの制度が組織的に人を殺すことがある」と述べ、 一人一人の力で国家や組織の暴走を防ぐよう訴えた。
村上さんは、エルサレムで開かれた授賞式に出席することが「圧倒的な軍事力を使う(イスラエルの) 政策を支持する印象を与えかねない」と熟慮した末、「欠席して何も言わないより話すことを選んだ」と明らかにし 「メッセージを伝えることを許してほしい」と切り出した。
村上さんは、小説を書く時「高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵」を常に心に留めており、 「わたしは常に卵の側に立つ」と表明。壁とは「制度」の例えだと説明し 「制度は自己増殖してわたしたちを殺すようになったり、わたしたちに他人を冷酷かつ効果的、組織的に殺させる」 と警告した。
これに対し、「卵」は壊れやすい殻に包まれたような個々人の精神を意味するとし、個性を大切にすることで 「制度がわたしたちを利用するのを許してはならない」と語った。
講演は英語で約15分間行われ、約700人の聴衆が大きな拍手を送った。一方で「政治的な内容で不愉快。 イスラエルに賞をもらいに来て批判するのはおかしい」(中年男性)という声も聞かれた。
2009/02/16 09:32 【共同通信】
asahi.com
村上春樹さん、エルサレム賞記念講演でガザ攻撃を批判
2009年2月16日8時27分
【エルサレム=平田篤央】イスラエル最高の文学賞、エルサレム賞が15日、作家の村上春樹さん(60) に贈られた。エルサレムで開かれた授賞式の記念講演で、 村上さんはイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に触れ、人間を壊れやすい卵に例えたうえで 「私は卵の側に立つ」と述べ、軍事力に訴えるやり方を批判した。
ガザ攻撃では1300人以上が死亡し、大半が一般市民で、子どもや女性も多かった。 このため日本国内で市民団体などが「イスラエルの政策を擁護することになる」として賞の返上を求めていた。
村上さんは、授賞式への出席について迷ったと述べ、エルサレムに来たのは「メッセージを伝えるためだ」と説明。 体制を壁に、個人を卵に例えて、「高い壁に挟まれ、壁にぶつかって壊れる卵」を思い浮かべた時、 「どんなに壁が正しく、 どんなに卵が間違っていても、私は卵の側に立つ」と強調した。
また「壁は私たちを守ってくれると思われるが、私たちを殺し、また他人を冷淡に効率よく殺す理由にもなる」 と述べた。イスラエルが進めるパレスチナとの分離壁の建設を意識した発言とみられる。
村上さんの「海辺のカフカ」「ノルウェイの森」など複数の作品はヘブライ語に翻訳され、 イスラエルでもベストセラーになった。
エルサレム賞は63年に始まり、「社会における個人の自由」に貢献した文学者に隔年で贈られる。受賞者には、 英国の哲学者バートランド・ラッセル、アルゼンチンの作家ホルヘ・ルイス・ボルヘス、チェコの作家ミラン・ クンデラ各氏ら、著名な名前が並ぶ。欧米言語以外の作家の受賞は初めて。
ただ中東紛争のただ中にある国の文学賞だけに、政治的論争と無縁ではない。01年には記念講演でスーザン・ ソンタグ氏が、03年の受賞者アーサー・ミラー氏は授賞式に出席する代わりにビデオスピーチで、 それぞれイスラエルのパレスチナ政策を批判した。
2009年2月10日20時38分
イスラエル最高の文学賞、エルサレム賞の受賞者に決まった作家、村上春樹さんに対して、大阪の民間団体 「パレスチナの平和を考える会」がホームページに公開書簡を掲載し、受賞の辞退を求めている。 欧米などから集まった賛同者約800人の署名を、村上さんに渡したいという。
同会はホームページ上に、村上さんへの公開書簡として、同賞は「社会における個人の自由」への貢献を讃(たた) えるものとしているが、イスラエルがガザで行った虐殺などは賞の趣旨に反する、などとした文書を掲載している。 同会の役重善洋(やくしげ・よしひろ)事務局長は「国際的に有名な村上さんの受賞は、イスラエルの戦争犯罪を隠し、 免罪することにつながる」と懸念している。