茂木健一郎著、PHP研究所刊。最近、本屋では脳科学者・茂木健一郎さんの本が、多く並べられていますが、そのなかの一冊。
『「わかる」を「できる」に変える』というサブタイトルで、脳の働きにからめて、仕事や行動に関する心構えやヒントを書いている点が特徴的。
著者は、脳の前頭葉が活性化して発揮される、自ら考えて動き、成長する「自立性」と「自発性」が生命の輝きそのものである、と言っています。
そのための行動として、クリエイティビティ(創造性)をはじめとする5つを挙げていますが、まず基本となるものは「感覚系」と「運動系」と鍛えて入力と出力のサイクルをまわすことだ、と言うことです。
では、「感覚系」=入力、「運動系」=出力とは何でしょうか。
感覚系とは、見たり聞いたり、外部からの情報を受け取り理解する。これを鍛えるには、例えば良質な音楽やスポーツなどを生で観て感じることが重要だそうです。運動系は、実際に身体を動かして実践する。スポーツや絵を描くなど、鍛えるためには反復練習しかない。
そして、感覚系と運動系をバランス良く鍛えることで、良いアウトプットが生まれてくる。感覚系だけ発達していては思ったような成果にならず、運動系だけでは、中身のない成果になってしまう、ということです。
これについては、仕事で思い当たるところが結構ありますね。指示は得意だが自分で設計作業するのが苦手なタイプの人は感覚系寄り、逆に考えるよりも報告書や設計図面を作るのが得意なタイプなら運動系寄り、という感じでしょうか。
どちらにもそれぞれ良さがあるのですが、どちらかと言えば、設計者としてはバランスが取れたタイプの方が良さそうではあります。しかし、組織として考えれば、チームを組んで対処する、という方法もアリでしょうね。
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また、著者は、わずかでも出力を続けることが、能力の向上や成長につながる、とも書いています。出力するために、感覚系で得た情報を脳の中で整理することで情報が定着し、出力を続けるとということは運動系のトレーニングになる、ということです。
そして、自分が出力したものをまた入力することで、新しいモノが見えてきたり、自分の出力に対して他の人が意見をくれたりすれば、それが自身の成長につながります。入力と出力のサイクルをまわす、というのはこのようなことです。
ただ頭の中で考えているだけではダメで、不完全でも良いからアウトプットすれば、そこからまた新しい何かが見えてくる。こうして日々ブログ記事を書くのも、入力と出力のサイクルをまわすトレーニングにはなっていそうですね。
仕事で特に時間がない時は、いきなり完全なアウトプット(成果物)を得ようと思いがちですが、やはりクオリティが高いものは何度か練らないと出てこない。わかってはいるのですが、やはり工期が押していると、実行するのはなかなか勇気がいります。
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入力と出力のサイクルをまわす、というのは、日頃似たような事を漠然と感じていましたが、系統立てた話を読んで、すっきりとしました。