都道府県が発注する公共工事の入札で、 予定価格の公表を入札前から入札後に切り替える自治体が増加傾向にあるとのこと。
昔は予定価格は公表されず、自治体から事前に漏れ出す事が多々あり、官民の癒着をまねくなど、 不透明な入札になっていると指摘されていました。その改善のため、予定価格を事前公表するところが増えてきた、 という経緯がありました。
しかし、事前公表だと、入札前に価格がわかるため、最低制限価格が推測しやすくなると言う効果も生み、 公共事業が減少していく状況で、とにかく仕事をとろうと、採算に合わないような安値入札が増えているようです。
価格競争と言えば価格競争なのですが、発注側は、あまりに安い価格では手抜き工事となるのでは、 という不安もあるようですね。
価格だけでなく、例えばコストダウン技術や工期短縮の技術提案などを加味して落札者を判断する、 総合評価方式というのもありますが、評価の手間暇や、発注側に総合的な判断が要求されることもあって、 全ての入札について行う状況にはなっていないようです。
事後公表は、極端な安値落札を排除して、ある程度の品質水準を維持したいがための対策、という趣旨のようですが、 入札価格の公表については、事前にせよ、事後にせよ、どちらも一長一短があるのは間違い無いところでしょう。
最も安いところを採用する、という方法をとっている限りは、 このような問題は大なり小なりついてまわることになりますね。
この件は工事に関する内容ですが、公共事業の設計においても同様に、予定価格は事前公表で、 最低制限価格ギリギリで安値受注、という状況のようです。こちらも、 同じように事後公表が増える(増えているのかも知れません)。
受注側はダンピングを繰返していても疲弊していくだけ、かといって今度は高くなれば談合を疑われたり、 となかなか難しいものがありますね。
YOMIURI ONLINE
「予定価格の公表は入札後に」切り替えの動き広がる
都道府県が発注する公共工事の入札で、予定価格公表を「事前」から「事後」に切り替える動きが広まっている。
事後公表を採用するのは、すでに21道県。予定価格漏えいなど「官と業」 の癒着防止を目的に2001年以降に急増した事前公表だったが、最低制限価格を予測しやすく、 安易に低価格で応札した業者が手抜き工事をする懸念もあるためだ。
背景には、公共工事削減で安値でも仕事が欲しいという業者の事情がある。事後公表への回帰については 「改革の流れに逆行」「品質維持のため必要」などと評価が二つに割れている。
国土交通省が予定価格の公表時期を「事前」「事後」「事前と事後の併用」 に3分類して初調査した07年9月時点では、事後公表は7県、併用も4県だけだったが、 昨年12月の同省調査などでは事後9道県、併用12県、事前26都府県になった。
予定価格はかつては公表されていなかったが、漏えい事件が相次ぎ、 01年4月に入札契約適正化法が施行されたのを機に、入札の透明化を図ろうと、事前公表する自治体が急増した。 事前に公表してしまえば、予定価格を知ろうと業者が自治体担当者に働きかけることもなくなるというのが狙いだったが、 予定価格の85%〜3分の2程度に設定されることが多い最低制限価格を推計しやすくなった。
このため、建設業界からも「最初から答案を示すようなもの。採算度外視の安値入札を誘発する」 (ゼネコン関係者)との批判があったほか、自治体間でも「欠陥工事につながりかねない」との指摘が出ていた。
昨年4月から事後公表に切り替えた岡山県では 「採算性や施工能力を考えない業者による極端な低価格での受注を排除できる」(技術管理課)と効果を話す。
昨秋から試行的に事後公表の併用を始めた宮崎県。 昨年4〜9月に事前公表で行った入札466件のうち最低制限価格付近での同額入札でくじ引きになったケースは32件 (6・9%)だったが、10〜11月に事後公表で行った101件では1件(1%)に減ったという。
一方、事前公表を採用する東京都。やはり07年度発注工事の11%が、 最低制限価格付近でくじ引きになったものの、担当者は「入札時に工事の見積書類を提出させてチェックすることで、 いい加減な業者はほとんど排除できる」と、事後への切り替えに慎重だ。
事後公表へ切り替えた自治体では「業者側からの設計に関する問い合わせは、設計者以外の特定の職員が対応し、 質問は書面で受ける」(北海道)など、癒着防止策の知恵も絞る。
(2009年1月20日03時07分 読売新聞)