今年のノーベル物理学賞は日本人3名が受賞することになりました。米国籍ですが南部陽一郎氏と、小林誠氏・益川敏英氏の2名のグループにそれぞれ賞が贈られるようです。
日本人がノーベル賞を受賞するのは2002年以来6年ぶり、3名同時は初。快挙です(^^)
物理学の中でも、素粒子物理学分野での業績が評価されての受賞のようです。理論的なことはよく理解できませんが(^^;、現在主流となっている理論の基礎を打ち立てたのですね。
近年、日本では理系志望が減少の一途をたどっている、といったことを聞きますが、今回のノーベル賞受賞がきっかけとなり、理系への関心が多少なりとも高まると良いですね。
asahi.com
ノーベル物理学賞、素粒子研究の日本人3氏に
2008年10月7日20時47分
スウェーデン王立科学アカデミーは7日、今年のノーベル物理学賞を、米シカゴ大名誉教授で大阪市立大名誉教授の南部陽一郎氏(87)=米国籍=、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)素粒子原子核研究所の元所長・小林誠氏(64)と京都大名誉教授で京都産業大理学部教授の益川敏英氏(68)の3人に贈ると発表した。
日本人のノーベル賞受賞は02年以来で13、14、15人目。物理学賞は同年の小柴昌俊・東京大特別栄誉教授に続き、5、6、7人目。賞金は1千万スウェーデンクローナ(約1億4千万円)で、南部氏に半分を、小林、益川両氏に4分の1ずつをそれぞれ贈る。授賞式は12月10日、ストックホルムである。
南部さんの授賞理由は「自発的対称性の破れの発見」。物質をつくる素粒子になぜ質量があるのか、という根源的な謎を解き明かす理論をつくり、その後の素粒子物理学の発展に大きな影響を与えた。
「左右対称」とは、一般に左右を逆にしても、見た目などの性質が変わらないことをいう。物理学でもこうした「対称性」は変わらず、普遍的なものと考えられてきた。
ところが、南部氏は61年、素粒子の世界で対称性が自然に失われてしまうケースがあるという考え方を初めて提唱した。「自発的対称性の破れ」という考え方で、これに沿って素粒子の理論を見直したところ、さまざまな謎を解く糸口が見つかった。
素粒子の質量の起源を探る研究や、自然界に存在する力を統一的に論じる研究は、南部氏の理論を土台に発展した。南部氏は、こうした斬新な考えを次々と打ち出した。
小林氏と益川氏の授賞理由は「CP対称性の破れに関する理論的研究」。両氏は73年、宇宙の成り立ちにかかわる「CP対称性の破れ」という現象を説明するには、物質をつくる基本粒子「クォーク」が6種類必要だと予言した。
この予言は、各種の実験でその正しさが確かめられ、素粒子物理学の基礎である「標準理論」の柱に発展した。
「CP対称性の破れ」は、物質を形づくる「粒子」と、性質がさかさまの「反粒子」が、本来は対等であるはずなのに、崩壊のしかたが厳密には対等でなくなる現象を指している。64年に、米国の実験で「破れ」が発見されていたが、うまく説明する理論がなかなか現れなかった。
小林・益川理論では、それまでは4種類と考えられていたクォークを6種類にする、という枠組みを導入した。クォークは実際には少しずつ別の種類と混ざり合って存在している。種類を増やすことで、対称性の「破れ」を鮮やかに導き出してみせた。
当時、クォークの想定は4種類で、しかも3種類しか確認されていなかった。単独の粒子として取り出せないこともあって、存在自体を疑問視する専門家さえいた。
小林、益川両氏は名古屋市出身。名古屋大で理論物理学を学んだ。この研究を発表したのは、ともに京都大助手だった73年。その後、小林氏は高エネルギー加速器研究機構教授、益川氏は京都大基礎物理学研究所長などを務めた。
2008年10月7日20時36分
〈南部陽一郎さんの略歴〉
1921年 東京生まれ
23年 関東大震災後、父の郷里の福井市へ
37年 旧制福井中学(現・福井県立藤島高校)卒業、旧制第一高等学校入学
42年 東京帝国大理学部物理学科卒業
49年 大阪市立大理工学部助教授
50年 同教授
52年 米プリンストン高等研究所に招かれて渡米
58年 米シカゴ大教授
78年 文化勲章
85年 マックス・プランク・メダル(ドイツ)
86年 ディラック・メダル(イタリア)
95年 ウルフ賞(イスラエル)
2005年 ベンジャミン・フランクリン・メダル(米)
◇
〈小林誠さんの略歴〉
1944年 名古屋市生まれ
67年 名古屋大理学部物理学科卒
72年 名古屋大大学院理学研究科博士課程修了、京都大理学部助手
79年 高エネルギー物理学研究所助教授、仁科記念賞
85年 高エネルギー物理学研究所教授
日本学士院賞、米国物理学会J・J・サクライ賞
95年 朝日賞
97年 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所教授
2001年 文化功労者
03年 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所長
06年 高エネルギー加速器研究機構名誉教授
07年 日本学術振興会理事
欧州物理学会高エネルギー・素粒子物理学賞
◇
〈益川敏英さんの略歴〉
1940年 名古屋市生まれ
62年 名古屋大理学部卒
67年 名古屋大理学部助手
70年 京都大理学部助手
76年 東京大原子核研究所助教授
79年 仁科記念賞
80年 京都大基礎物理学研究所教授
85年 日本学士院賞
90年 京都大理学部教授
95年 朝日賞
97年 同大基礎物理学研究所長
2001年 文化功労者
03年 京都産業大教授
07年 欧州物理学会高エネルギー・素粒子物理学賞